快晴で美しい


 正午前の電車で藤沢へ、藤沢から小田急で新宿へ。駅から歩いて西新宿にある富士フォトギャラリーで開催中の「KUPS-OBclub東京春第10回記念展」を見に行く。この写真展に会社の大先輩が参加している。途中EPSONのギャラリーepsiteに寄ってみたら「本城直季新作写真展 ここからはじまるまち Scripted Las Vegas」をやっていたので、これはラッキー、じっくりと鑑賞。数年前にsmall planet展でも感じたのだが、逆アオリによる実景をミニチュアのように見せるという効果は、せいぜい半切が全紙くらいまでが的確サイズのように思う。それより大きな作品だとあまりこの効果を感じない。高速道路と海の作品はフェイクな感じが面白く楽しめる。大型プリントの空港、住宅地、ビル街、操車場などは、逆アオリで作品を仕上げる必然性ってどうなのかな?そういうわざを使わなくても、力のある作品になり得るのではないか?と思いつつ、三度、四度とゆっくりと会場を回る。
 丸の内線で西新宿から新中野に移動。冬青社ギャラリーに小栗昌子写真展トオヌップ。以前、ネットでこの写真家の「百年のひまわり」という写真集のことを知り、購入したことがあった。東北に暮らす年老いた兄妹を追った写真集で、写真の記録性を重視したコンベンショナルな表現なのだが、被写体の魅力と白黒写真の黒の力により、見るものに迫る好感の持てる写真集だった。そんなこともあり、楽しみにしていた写真展。「百年のひまわり」でも感じたことだが、逆光の風景写真が美しい。銀粒子の粒立ちがそのまま光の粒のように輝いて見える。遠野に住む多くの人たちのポートレイトに混じってそういう風景写真が散りばめられている。
 JRで渋谷へ。ナダール渋谷にてモノクロ普及委員会写真展を見る。出展者の植田さんが近くのドトールで珈琲を買ってきてくださる。ありがとう。
 昨日までの雨のせいか、今日は澄んだきれいな晴れでした。

 電車の中で、昨晩、本棚の奥の方から引っ張り出した1980年に買った文庫、片岡義男著「人生は野菜スープ」から「馬鹿が惚れちゃう」を読む。昨日の日記に書いたとおり、先週、何十年ぶりかで読んだ片岡作品「星の数ほど」では、なんで二十代前半にあんなにも片岡さんの短篇に私や大勢の若者は魅了されたのか?不思議な感じがしたのだが、「馬鹿が惚れちゃう」は読んでいると、場面場面が映画を見ているように目の前に次々に展開する。読後感というより映画を見たような印象が残る。たぶん「星の数ほど」みたいなある程度のお金を持った上で恋愛を楽しんでいるようなシチュエーションではなく、より初期作品の、あやうさの中にいる(その分、夢があったり無鉄砲だったりする)若い人を主人公にした小説の方には、70年代ATG青春映画のようなはかない輝きがあって、それに惹かれていたのではないか、と思いながら、予想よりはるかに楽しく三十年ぶりの片岡義男を楽しめた。

 写真は1994年ころの平塚海岸。