今日はライブに行ってきます


 (7/19.AM11:45記)今日の夜は日比谷野外音楽堂まで「結成四十周年記念、山下洋輔トリオ復活祭」のライブを聴きに行く。今の学生さんたちもそうだろうし、あるいはもう学生時代を通り過ぎてしまった人たちは学生時代の出来事としてそういう経験があるのだろうと思うが、何かにかこつけて誰かの家に昼下がりくらいから三々五々みんなが集まって、飲んだり騒いだり、ケンカしたり恋が芽生えたりしながら、だらだらと時間を過ごし夜になり、場合によっては朝になり、というようなことがあって、そこに議論(というより妄想?)が生まれたりもしていただろう。そんな時期が私にも過去にあった。そのころに書いた日記みたいな文章を引用してみる。

 あの時、他の連中の何人かはフリージャズのライブアルバムを聞きながらじゅうたんの敷かれた部屋の中をのたうち回ったりしていた。それは山下洋輔のフリージャズのトリオ、ピアノ山下洋輔!アルトサックス阪田明!ドラムス小山彰太!の3人のトリオがどこか海外のジャズフェスティバルに「出現」(て、感じ)した時のライブレコードで、このレコードを持ち込んだ友達が、言った。
「あのさ、このレコードを理解して完全に一体化するためにはさ、僕はこうして、」
と言って、家の南側に面した、その、ステレオセットの置かれた洋室のじゅうたんにごろりんと仰向けに寝転がって、その姿はまるでとんぼみたいだった。どうして、とんぼ、を思わせたのかと言うと、彼は足の先をぴたりと合わせて伸ばしていたのと、小さい尻のせいだったろうか。
 冬の日差しが部屋の奥まで差し込んでいて、だからその友達の頬とかにレースの陰が出来ていた。
それで、その姿のまま、
「さあ、針を落として、レコードをGOしてくれ」
僕は部屋の入口の柱に寄りかかり、腕組みをして、右足を左足の前に交差させて、彼を見ていた。レコードをGOってなんのこっちゃ?
 やがて、曲が始まり、それは徐々に熱を帯びてきて、それと同時に真上をむいて、とんぼみたいになりながら目を閉じていた友達が、う〜ん、とか唸りながら右に半回転、左に半回転とからだを動かし始め、何度目かにごろりと、寝返りがついに出来た赤ちゃんみたいに転がった。そしてそれ以来、彼は時々壁やら本棚やらに頭をぶつけながら、ごろごろと回り、やがてぴんと伸びていた体もぐにゃぐにゃになり、のたうち回りだした。
 あきれた僕は向こうの和室でトランプをやっている連中のところへ行くことにした。でも、のたうち回りに共感した奴も、そう、二人くらいはいたらしく、彼等は早速横になり、一人は女の子で、スカートから出たふくらはぎにもレースの影が出来て、ちょっと目を見張った。


 この文章では「私」はごろごろと転がりながら「モントルーアフターグロー」のLPを聴く友達に「あきれて」いるけれど、実際には1970年代の終わりに山下トリオの音楽と、山下洋輔筒井康隆タモリなんかを中心に起こっていた「おもしろおかしい」表現活動に夢中になっていたのは、もちろん、私自身だった。私は山下+坂田+小山時代の第三期山下トリオが学生時代に大好きで何度かコンサートにも行っていた。今日は25年ぶりくらいで山下洋輔トリオが復活するというので、これから行ってきます。

 上の写真は、そのころに撮った一枚。