山下洋輔トリオ復活祭の空に虹が掛かった


 昨日は日比谷外音に結成40周年記念山下洋輔トリオ復活祭に行って来ました。70年代後半、リアルタイムで聴いていたころは第三期トリオの活動期間だったので、何度も聞いたモントルー・ジャズ・フェスのライブ・レコード「モントルーアフターグロウ」のままにバンスリカーナとゴーストが演奏されたときは、もう嬉しかったですねえ。第二期トリオメンバーによるキアズマの演奏中には、空に二重の濃い、くっきりした虹が掛かって、まあこんなのは偶然に過ぎないわけですが人間のおセンチな気分で言えば「祝福」の虹でした。セミの声やパトカーのサイレンが演奏や観客やらを含むその空間全体をまた包み込む都会のノイズとして重なってくるのも、野音ならではの、まさに今という時間が音楽と共に進んでいるというようなライブ感がここちよい。この「はてな」のブログで昨晩のライブレポートを書いていらっしゃる方が何人かいて、そういうブログを読むと坂田明が不調だったということが書いてありました。うん、でも、それが不調なのか何かはわかりませんが、それも含めた全体の演奏が何かを想起させるとすれば、不調かどうかはどうでもよいことで、この日のバンスリカーナは、会場を低く飛び交う黒いトンボのイメージとともに(なんてところもますますおセンチ)、ダークな感じが強くてそこが魅力的でした。第一期メンバー演奏時に、私の席C8列80番台のすぐ後方でケンカが始まり、その怒声は演奏を聴くのにちょっと邪魔なほどの怒鳴り声で、でもこれも60年代70年代の雰囲気だと無理矢理解釈してやり過ごしました。小山彰太のドラムスも図太いけれど、森山威男に比べるとリリカルなところが多いようです。森山はもっと「男気」って感じで、石原裕次郎とかの時代にそのイメージが作られた?ワルのドラマーの雰囲気を身に纏ったようで、ラストの、ぐがん、での小山vs森山はそれぞれの特徴を繰り出しあっていて息を飲みました。中村誠一のソプラノサックスがもう暗くなって虹も消えた夜空に響く木喰は、なんといえばよいのか、言葉がみつからない。鳥肌が立ちました。それにしても山下洋輔の演奏は年齢を感じさせない。どこまでが出来レース的なショーで、どこからがその日その日の、よく言う「丁々発止」のインタープレイなのか?そんなことはどうでもいいや、あの鍵盤を駆け上り駆け下りる指や掌や肘からなんでこうも美しい音がこぼれるのか!?不思議はいまも圧倒的に不思議なままです。
 すばらしかった。

 写真はライブの後、有楽町まで歩く途中にどこかのホテルの前を通りかかったときに撮ったものです。

新編 風雲ジャズ帖 (平凡社ライブラリー)

新編 風雲ジャズ帖 (平凡社ライブラリー)


(以下7/20part2;21:30記載)

 深夜2時、例年通り、家の前のバス通りを茅ヶ崎の夏の風物詩、浜降祭の神輿が通る。祭り太鼓の音、神輿を担ぐ掛け声、大勢の話し声、で毎年必ず起きてしまう。それでベランダに出て、コンデジで通過する集団を写真に撮り、もしこのまま眠れなかったら、四時ころに家を出て茅ヶ崎市中の各神社から出た神輿が整列する茅ヶ崎漁港神事を見に行こうかと思うが、眠ってしまい叶わなかった。毎年そう思い、結局この約20年のあいだに早朝の神事を見に行ったのは三回くらいしかない。神事では野菜が献上されるようなところがあった、というかそれだけを覚えている。
 夕方の4時半ころに自転車で家を出て、cafeHUTCHへ。最近作った手作り写真集を持って行き、写真家のマスターに見てもらい、と小一時間、写真談義を楽しむ。流石に写真について詳しく、お話を聞いて参考になる。ノーファインダーやアウトフォーカス写真のもたらす偶然の驚き、鑑賞者の個人的記憶を呼び起こす写真の力、など、意見が合致して楽しい。
 そののち、茅ヶ崎海水浴場へ。もう海の家も店じまいの時間だが、うち一軒の周りに大勢の人がいる。何かしら?と周りの様子を窺っていると、なんと、サザンの桑田さんのライブ収録が行なわれるということ。ここは、野次馬精神を発揮して、群集の中にまぎれて30分ほど待っていると、演奏が始まった。海の家の中に入れるのは招待された?あるいは抽選に当った?ひとたちだけで、一般の野次馬はステージの後ろにあたる砂浜の制限区域外から「ステージ裏をのぞきこむ」形。それでも桑田氏はときどきそちらに顔を出して手を振り、そのたびに歓声が上がる。彼の顔をしっかりと見極めてから、群集からはずれて、漁港の方を撮りに行く。いちいちの曲名までは判らないが、よく知った曲がオンパレードで演奏される。私は「涙のキッス」か「真夏の果実」か区別がつかない程度なので、どうもすいません。あ、「チャコ海」は判りました。最後までは聞かずに帰宅。
 お父さんとお母さんは桑田さんに夢中なのか波打ち際や砂浜は走り回る子供たちの天国。

 海水浴場の西に漁港、漁港の西は遊泳禁止の浜辺。