横浜ジャズプロムナード2011


 昨年に引き続き、ジャズプロムナードに行ってきた。昨日と今日の二日間のイベント。11時過ぎに関内駅に着く。今日だけの一日券を関内駅前で購入した。関内は横浜ベイスターズ阪神タイガースの試合が横浜スタジアムで行われるらしく、たくさんの野球観戦の人たちであふれていた。昨年の経験から、市内に何か所かある会場を行ったり来たりするわけだが、やはり近いところで固めた方がいい。関内ホールとヨコハマNEWSハーバーと開港記念会館は徒歩15分くらいの範囲にある。これにランドマークホールと赤レンガ倉庫を加えるとちょっと範囲が広くなってしまう。ということも考慮にいれつつ、もちろん、どこの会場で何時から誰が演奏をするかをチェックして行動計画を決めるのだが、決めたつもりになっていても、またぞろスケジュール表を見直してああでもないこうでもないと考え込む。最初の案は11:30から関内ホール大ホールで中村誠一オルガンバンド→昼食→13:50から関内ホール小ホールで田中信正KARTELL+神田佳子→開港記念館で15:40から山本剛トリオ→しばらく写真を撮って散歩→18:00から関内ホール大ホールで板橋文夫トリオ&オーケストラ→途中で抜け出して19:50からNEWSハーバーで中牟礼貞則トリオ、と組んだ。これが家を出る前です。
 私は、トラウマ的経験のせいか、ジャズボーカルはあまり好きではないですね。ジャズボーカルは、途端に旧態然としたかくあるべきという世界になってしまう感じ・・・というのは後付の言い訳で。トラウマというのは二十代のころにいまはないジャズのライブハウスで、女性ボーカルのまあ大御所に方のライブをじっと聴いていたら、その方に「こちらのお客様、お静かな方ね」とか言われて(からかわれて)、当時の私は主たる客層よりはるかに若かったうえに見た目はもっと若く見えていたので(会社に入社したときに同期のやつの息子だと思われたことがあった)それもあってか、年配の客(当時の五十代だとするといまは八十くらいの方々)からどっと笑いが起きた、なんてことです。大御所というのはN本Mさんなんですけどね。
 それで、詳細な出演者リストを見ていてボーカルが入っているのは避けようという意識が働いてしまう。いや、余白やさんなどに教えられて、昨年は酒井俊のライブを、藤沢パンセで聞いたり、ジャズプロムナードでも関内ホール大ホールで聴いて、素晴らしいと思いました。だから同じボーカルでも、なんちゅうか、スタンダードはかく歌うべし的なのが嫌いなんだろうね。いや、単にトラウマの再現が怖いだけなのかな。まあいいや、とにかく避けてしまいがち。
 それで新たに電車の中で、古野光昭フルノーツ→昼食→(頑張ってランドマークまで移動して)鬼怒無月Salle Gaveau→開港記念会館に戻って山本剛トリオ→以下は当初案、というのに変更した。
 それで、実際にはどう動いたかというと、開港記念会館で古野光昭フルノーツ→昼食(以外に時間がかかってランドマークへ行けなくなったので)→関内ホール小ホールで田中信正KARTELL+神田佳子→開港記念会館に歩いている途中にNEWSハーバーでほんの数分だけ小山彰大+スガダイローをのぞき→開港記念会館で山本剛→演奏中の高橋知己カルテットを聴こうとNEWSハーバーに向かって歩いていたら途中でどこからかドラムスの演奏音が聴こえてきてふらふらとそっちに向かうとTenderlyというジャズクラブがあり(横浜ジャズプロムナードでは参加ジャズクラブも当日券で入場可能、ただしドリンク注文が必要)狭い店内でぎゅうぎゅうづめのお客さんの熱気に惹かれて入ってしまう。聴いたのは福井ともみトリオ。ベースが俵山昌之でいつぞやどこかで聴いたときのこのベーシストの佇まいがよかった記憶があったのでそれも入場の後押し。→そのあと時計を見間違えて!すでに6時10分前で板橋トリオの関内ホールは間に合わないと勘違い(実際は6時20分前だった)。途中のNEWSハーバーに入る。聞いたのは早坂紗知Minga→開港記念会館に戻り19:20から鈴木良雄Bass Talk→そのあと最後に演奏中の中牟礼トリオの後半を聴こうと外に出ようとしたら大雨が降っていて、開港記念会館の中で雨宿り。
 もう十数年続いているイベントだけど昨年初めて行ってみて、昨年は終日小雨が降っていたし、赤レンガ倉庫からランドマークから野毛を回って関内ホールと動きすぎで疲れてしまった感があったが、今年は成功。ジャズクラブも結果としてひとつ聴けたしね。やはり熱気みたいなことを味わうにはジャズクラブだなと感じました。
 一方、演奏に浸るのはどちらかというとホールだったでしょうか。今日はどの出演者にも、少なくとも一曲は感じ入ることが出来る演奏があったのがうれしい。
 フルノーツでは私の大好きな古野光昭の弓弾きによるピアソラのLibertangoの美しさ、黒いオルフェの指弾きベースソロの深み、というかなんというか、まあぐっと来てしまうのですね。
 田中信正はジャズプロムナードの案内冊子の演奏タイプ分類によるとモダンジャズを示す「M」マークが付いているのだが、フリーの要素たっぷりの攻撃的な曲で、そのなかにときに美しい旋律が潜んでいて、はっとさせられる。一曲目のエッジという題名の曲の疾走感、でもそれは暗い曇天の、ひたすら荒地が続く道であって。田中さん、遠くから見ているかぎり長谷部に似てました、サッカーの。
 山本剛、ハイティーンのころからTBMレーベルのMistyやGirl Talkをよく聞いたもの。六本木のライブハウスで80年代前半にその演奏を何度か聴きに行って以来、久々にお姿を拝見すると、人には等しく時間が流れるもので貫録たっぷりの好々爺風味。しかし今日も演奏されたMistyは円熟の極致。澄んだ音色はたまらない。ラストは酔いどれじじいの戯言的なボーカルまで披露。アンコールで再登場したときに帰ってしまっていた方は残念だったですねえ、ピアノソロでダニー・ボーイ。
 福井ともみのライブは、私の座ったカウンター席のすぐ、数十センチでピアノ演奏がなされ、指の動きも見えるし、譜面というのはこの程度の約束事が書かれているものかと眺めたりする。どの曲がどうというより小さい会場の熱気に酔いしれる。俵山ベースの安定と冒険も良し。私の隣に座って漢字のお勉強をしながらの聴衆、小さな女の子の拍手もよし。
 早坂紗知Mingaではベーシスト永田利樹の作曲したという新しい「トーキョーなんとか」という曲の吉田桂一(Pf)がリードするあたりで泣きそうになる。哀しいけれど、再生の力のある。
 鈴木良雄ベーストークは品の良さが際立つ。ジャズミュージシャンが自分の故郷などをテーマに据えた曲というのを作ることってよくあるのかな?以前、ベースの上村信の作った利根という曲を何かのライブで聴いてきれいな曲だったということだけを覚えている。板橋文夫の「渡良瀬」もそうなのかな?それで、今日のベーストークの演奏では、鈴木良雄の故郷の木曽福島から見える前駒ヶ岳(とMCでおっしゃっていた)からタイトルを取った「駒」という曲が演奏されたのだがこれがまた親しみやすいメロディでありつつ、清冽で気品もあり美しい曲でした。
 雨宿り数十分。雨上がりの関内あたりをカメラを持ってぶらつく。上の写真や下の写真です。


フルノーツ・フォー・キッズ

フルノーツ・フォー・キッズ

Edge

Edge

Misty

Misty

At That Moment

At That Moment

ミンガ

ミンガ

ラヴ・レター

ラヴ・レター