三崎散歩


 水を抜かれた三崎市営プールの底の水色は、ホックニーの描いた「水がちゃんとある」プールの絵みたいだった。

 余白やさんと二人で、三崎の町を事前調査ゼロで気が向くままに散歩しました。

 ところで一昨日の木曜日、夜のテレビの歌番組を見ていたら、十九か二十歳のころの石川さゆりの映像が流れて、そのこぶしを入れて歌っているときの眉毛がハの字になった表情が、大島の優子と似ている気がした。今日の帰りの電車で余白やさんにそのことを話したら、彼は大島嬢のことなどまったく知らない。それで早速、二人の画像を順にスマホで検索して、その結果、彼の結論は「いやー、似てないね」というものだった。でも優子さんの眉毛は、よくハの字になっている。

 三崎港から満員のバスで三崎口まで戻る。そのときにつり革につかまった私のすぐ横に座っている釣り男とウォーキングツアーに参加してきたらしい初老の男が話しているのが聞こえてきたのだが、三崎に鮪を食べにくる人がたくさんいるけど、実際には三崎に鮪の船が入ることなんかもうずっとなくて、鮪はほかの、たとえば和歌山の方の漁港に入ったものを冷凍して三崎に持ってきているのだ、だそうだ。今日の昼は鮪を食べた。トロの丼と串揚げなんかを。遠洋で取っている鮪は船の中ですでに冷凍されるのだろうから、水揚げされた場所で食べるのが新鮮ということはなくて、冷凍状態が保存されたまま流通される範囲ではどこでも安定して美味しいのではないか?だからすでに名物が鮪ということが確立している三崎では、やはり鮪は(ほかの漁港に入ったものであっても)名物であり美味しい。
 と、思ってみたものの、そんな話聞かされてちょっと興ざめではありますね。

 三崎の路地を歩いているとむき出しになったガケに地層が見えるところが目につく。そのむき出しのガケに穴がたくさん開いていて、あれは何かのすみかなのか?余白やさんはそういえば今朝、こういうガケの脇の道を歩いている夢を見た、とか言い出した。黒ヒョウもその夢には出たらしい。
 私は最近、自分の見た夢はというと、起きた瞬間に覚えている気になっていても結局はすべて忘れてしまっている。

 私はいま、文庫で出たばかりの保坂和志著「小説、世界の奏でる音楽」を読んでいるのだが、なかなか読み進まない。単行本が出たときに読んだときには、理解も楽にできて、すいすいと読めたと思うのだが、今回はなかなか読めないし、理解度も低い。読んでいてもすぐに眠くなる。





小説、世界の奏でる音楽 (中公文庫)

小説、世界の奏でる音楽 (中公文庫)