横浜森林公園と大岡川


 横浜森林公園に行く。朝8時前、日も差さず寒い。もう二十数年前に新宿のデパートの上階でデビッド・ホックニーのフォトコラージュの写真展を見た。たくさんの枚数の写真をつなぎ合わせて一枚の大きな作品を作る技法です。当時はいまみたいに大型のプリントを簡単に作れる環境ではなかった。同じころに見た、アンドリュー・ワイエスの絵画展で、そもそも作品の「大きさ」のところからして写真は絵の迫力に、おいそれと迫れないのではないか?と感じたこともあった。そんなこともあったのか、ホックニー展を見たそのあと、数年のあいだ、ホックニーのフォトコラージュ手法を真似して、いろんなのを作ってみていた時期があった。いまはすっかり住宅地になってしまったが、住んでいるマンションの南側には田んぼがあって、そこを春から秋まで記録して、三つの季節の写真をごちゃまぜにコラージュしてみたり、平塚のサッカー場に何試合も通い、同じ席から写真を撮って、グラウンドに百人も、二百人も選手がいるような作品を作ったりしてみた。
 そのころに、全体を見回すと下の写真のように、桜の森が長楕円に広がっている横浜森林公園の桜が満開のある日の様子をコラージュ作品にしたことがあった。画面の中に例えば黒い犬を連れた女性が犬に引っ張られるように走っていくのが、時間の中で何枚も写っているので、その女性がどっちからどういう経路で桜の手前の芝生を横切って行ったかなんていうのが、詳細に見ると判るように作ってみた。
 それから二十年を経て、同じ試みをしてみようと思い、自宅のすぐ前のバス停留所から始発のバスに乗り、茅ヶ崎から大船経由で京浜東北線で山手まで行き、そこから急坂を上って森林公園に行ってみた。
 コラージュを作るさいに、とくに画面をきっちりつないで行きたいならば、歪曲収差が少ない望遠系の焦点距離を使うのがコツである(でもワイド系を使ってラフでポップな雰囲気の作品を作ることももちろん出来る)。
 そこで、今日はコンデジの望遠側(私のコンデジの場合は銀塩換算100mmくらいだったかな・・・、二十年前には200mmで撮ったと思う)を使って横に5から6駒くらいで長楕円が全部収まるように撮った。AEにすると、桜の上部を撮っているときに空に引っ張られて露出がアンダーになるから、マニュアル露出にする。
 それで横が5〜6駒、縦が3〜4駒になるようにして、その6×4=24枚くらいで下の写真の全景が構成されるようにしてまずベースとなる24枚を撮り、そのあと、その範囲内を適当に人がなるべく入るように撮った。そういうときの一駒一駒は、作品の一部を形成するピースにすぎない。パズルのピース。だからその一駒で写真の作品っていうのか、そういうことを完結させようとは思っていない。
 それでそんな風に一枚の中で作画をしたり決定的瞬間を撮ろうとしたりという、写真を撮るうえで、必要なのか不必要なのか、やっかいなのか当然あるべきなのか、そういうのはことはさておき、とにかくそういう「意図」がたぶん相当排除されているのだろう写真がピースとして数百枚撮られたことになった。
 上の写真はそんな中から拾ってみた一枚で、そういう「作画意図」がないままに撮られた写真です。家に帰ってそういう一部分を構成するために撮られた意図が少ない写真を見ていて、そういうことを封印して、なにか面白い写真があるだろうか?と見ていったときにちょっと面白いかもしれないな、と思った写真です。
 当然のごとくつまらない写真、左の方の芝生に置かれた誰かの荷物が邪魔だとか、荷物が不要でその変わりもう少し人物が欲しいとか、もう少し引いて上の方に満開の桜を入れるべきだ、とか、一枚写真をお作法にのっとって作ろうとするとこんな写真はダメダメだろう。けれど、このなんだか不安定で根拠のようなことのないのが、私にはちょっと面白かったりするのは、どうしてか!?ってことですよ。そういうのを考えるのが好きです。

 昼に家族の某と横浜駅で待ち合わせ。午後は大岡川沿いの桜並木を歩き、屋台で買ったお好み焼きを食べた。