吾妻小富士


 8/12から一泊二日で磐梯あたりに旅行に行く。レイクラインとかスカイラインとか、もうひとつ、なんとかラインという、いまは無料化された山の中のくねくねした道路が猪苗代湖から磐梯山の間を抜けて上がり、湖に沿って東へ、浄土平を越えて福島に降りるようにつながっている。郡山でレンタカーを借り、郡山東インターから磐梯河東インターまで行き、少し行ってから最初のなんとかラインに入った。12日の夜は、一応秘湯ってことになっているらしい、野地温泉旅館というところに泊まった。一週間前に、旅行会社のネット検索で見付けた温泉の評判がとても高い宿。実際、五つある風呂のうち三つに入ったが、どれもゆったりと湯に浸かれる。夕食は昔ながらの旅館の夕食といった感じで、懐かしさも含めて、満足できた。

 今年の春先に父のネガを眺めていたら、駐車場のバスの向こうに見える山の稜線に、シルエットになって人が沢山写っている写真(http://d.hatena.ne.jp/misaki-taku/20130112)があり、ここはどこなのだろうか?と思っていたところ、その写真を見た須田塾仲間のRFさんが、吾妻小富士だと教えてくださった。父の写真に写っていたその吾妻小富士に立ち寄る。好天。雲が沸いて、流れて、消える。十分ほど、丸太を階段にしたつづら折りの道を上がると、その山の火口をめぐる稜線に出る。風が気持ち良い。
 このあたりは浄土平という場所で、ほかにも湿原の散歩コースなどもある。ここから福島方面に車で降りていくと、火山性ガスが発生して危険なので車の窓は開けないこと、といった内容の注意書きが書いてあった。
 吾妻小富士の上からはこんな景色が見える。



スカイラインを降りていき、ちょうど正午ごろでもあり、途中にあった胡胡里庵というそば店に入ってみる。この旅行に出る前に郡山とか福島のことで何か美味しいものが食べられるかな?と検索してみたら、ソースかつ丼と蕎麦がよくヒットするので、ソースかつ丼はさておき、蕎麦をどこかで食べたいなと思っていた。駐車場は満車で、店に入ると待っている人もいる。それでもすぐにカウンター席で良いか?と聞かれ、それでいいと言うと案内された。蕎麦通ではないし、どう蕎麦の良し悪しを判断するのか全く知らないが、とても美味しい蕎麦だった。
 フルーツラインというらしい果樹園の真ん中の道路があって、その近くのJA即売所みたいなところで桃やトウモロコシを、持って帰れる程度だけ購入。

 福島駅近くのオリックスレンタカーに日産ラティオを返却し、徒歩で福島駅。コインロッカーに荷物を入れ、身軽になってから福島県立美術館に「若冲がやってきた」展を見物に行く。
 慣れない車を二日間運転していたせいか、はたまた吾妻小富士への十分の上り道を歩いたせいか、足、とくにふくらはぎが疲れているのが判り、ゆっくりと絵を見る体力に欠けているのだった。
 それにしても、若冲の、タイル貼りのような技法で描かれた、向かって右がたくさんの動物、左にたくさんの鳥の屏風絵は不思議なものだ。まだわれわれが気付いていない、絵を描くときに想定された鑑賞の条件、もしくは鑑賞者の条件があるのではないか?などと思ったりした。あるいは私(もしくはわれわれ)が4×4のマス目の黒白で示されるデジタル数字や、デジタルの写真だってパソコンモニター上でどんどん拡大していくと四角いマス目が現れる、そういう経験や知識(というより新しい常識?)を持っているのに対して、この絵の時代には、そういう経験や知識がない変わりに、いまは無くなってしまった、もしくは消えてしまった、そのときの誰もが持っていた経験や知識があったはずで、それを前提としたときに初めて何かが見えるのかもしれないとも思った。