ブーヴィエ


 「ニコラ・ブーヴィエ世界」という本は数年前に購入して最初の数十ページを読んだあと積読タワーに埋もれていたが、今年の春にkyoto graphieで展示を見たこともあって、だけどその直後に再読し始めたわけでもないところが理由として微妙なのであるが、この9月頃からちょろちょろと再読をしてきている。最初の若かりし頃に東欧を旅したような旅行記はいかにも若さあふれる好奇心と自由気ままさがもたらす友情や、それに根差す運のようなものが総じてきらきらしていて明るく読める。続く日本の50年代後半から60年代前半の頃かな(もういちど読み返せばはっきりするのだが)を歩いた記録は、こちらが2013年とはいえ、ブーヴィエに見られている側の日本人であるからどうしてもそういう立場から見返すように読んでしまう。それにしてもどこへ行っても順応が早くそれにより分析も的確で、読んでいて飽きない。その次に「かさご」というインドあたりなのかな、この旅行記は苦痛と鬱屈と挫折と敗北感が蔓延している。こちらの読む速度も低下して、読んでいても、視線が行を追っているだけで、数十行ものあいだなにも意味を把握しないままだったりして、あれ?何が書いてあったのかな、と思いまた数十行を戻って読むのだが、その最中にまた別のことを考え始めていて、再び、あれ?となってしまう。そんな風に苦痛の読書のようなことをしているのだが、読み終わってみると、実のところはこの「かさご」というシリーズが一番、文章から感じる色合いのような、音楽のような、そういう言葉じゃないところの感覚が動かされたという印象が残っているのだった。風景の比喩などがかなり大仰でドラマチックなのだが、それも含めてブーヴィエの世界として、包まれる。

ブーヴィエの世界

ブーヴィエの世界


 最近TSUTAYAから借りてきて「ルアーヴル靴みがき」「ニーチェの馬」という映画を見た。そのうち感想を書くかもしれません。