熊本へ 22日のこと


 
早くから予約しておいた熊本旅行と、私も同人の一人として参加している写真同人ニセアカシアによる「ニセアカシア発行所」が出店するTokyo Artbook Fairの予定が重なってしまったので、Art book Fair2015は初日しか手伝えなかった。同人の皆さん、ごめんなさい。私が参加していた初日は本がほとんど売れずに心配したが、結果としては例年よりも売り上げが伸びて出店費用も回収出来たそうなので良かった。同人のデザインや印刷や製本をいつもやってくださる松本さんにおんぶにだっこの状態で、いや常態で、今回もニセアカシア6「辻々」は多分だけど松本さんのほとんど徹夜作業の結果、なんとか出来上がった。そのニセアカシア6も用意した分は全冊完売とのことで、購入頂いた皆様、ありがとうございます。

熊本の最終日には小泉八雲の旧居と熊本城などを含みながら市内をぶらついていた。午後には二時間ほど一人で歩ける時間が出来たので、喫茶アローで写真のようなカップの底まで透けて見えるような独特の珈琲、素人の私が推測するに極浅く煎ってある豆を粗びきにしてあるのか、マスターが見せてくれたのは布のフィルターによるドリップで、湯を落とすのは比較的ゆっくりと慎重に、と言う感じだが、そんなことを探ったり推測したり詮索するよりも、ここに「珈琲アローの珈琲」と言う唯一無二の飲み物があり、それを初めて楽しむと言うことなのだ。ほんのりと甘く。
初めて遠方から来た客はリピートの確率も低く、通りすぎるだけなのに、マスターはそう言う客こそ居心地の悪さを感じないようにと配慮をされるのか、長年そう言う接し方をしてきて特段の「配慮」なんて単語で現す気持ちなど多分ないとは思うが、ずっと私に話を、笑顔絶やさずにしてくださった。常連さんは半分だけその様子を聞きながらゆっくりと過ごしている。白い百合が生けられた大きな花瓶、使い古されてニスが剥げたカウンター、蝶ネクタイになにやらいくつものバッジを胸に付けたマスター。もう51年もここで店をやっていて、あとまだ50年、やりたいとおっしゃっていた。
そのあとに色々な雑誌の本の特集号で何度か見たことのあった橙書房を訪ねてから、再び家族と合流し、リムジンバスで空港へ。夕食を空港で食べ、土産を買ってから、夜遅い飛行機で羽田へ。