並走する私鉄


自分が乗車している南行JR宇都宮線が真っ直ぐ進む。そこに右後ろから左前へと、東武の線路が高架になって緩やかにカーヴしなから交差する。
こんな風に、交差したあとに左側に見える東武の線路に、ちょうど電車が並走することは稀だ。
走っているこっちの電車の窓から、走っているあっちの電車をピタリと流し撮りで止めるのは至難の技だ。これがせいぜいの結果だった。
二つの線路にはさまれた場所は、暗くてわからないが、例えば畑があってそれぞれの線路に沿って農道がある。と、仮定する。その農道に立って、こんな風に電車から電車を撮る、などと言うあやふやで不安定な出たとこ勝負、ではなくて、電車のなかの客が露出オーバーにならないシャッター速度と絞りと感度を上手く選んで、何度も何度も立っている農道から遠い方の線路を走っていく電車を流し撮りすると、なかに奇跡的にピタリと止まって写るコマが撮れるに違いない。
などと作戦を練って、写真を撮りに出掛けては、結果をカメラの設定や撮り方にフィードバックして完成度を高める。そのうちにテクニックは固まって、あとは車内にいる乗客が、なにか偶然に伴う面白さを発生させるのを期待して枚数を重ねていく。
偶然に伴うなんとかって言うのは、例えば真っ白な服ばかりのなかにひとつだけ赤があるとかの色の面白さとか、全員がスマホとにらめっこしている形の面白さとか、かな。

などと妄想しても、私はそんな面倒なことは、やらない訳です。