小屋へ行きたい!


 最近のデジタルカメラの「高倍機」の中には望遠端の画角が135フイルム換算で1000mmを超えるものもあって、すなわち、フイルム時代には大型三脚と数百万円以上のカメラシステムでないと撮れなかった写真が、数万円で手持ち撮影で撮ることが出来るという可能性が生じていると言える。この手のデジタルカメラにより、鳥の撮影や月の撮影などの、従来から超望遠レンズで撮影していたような種類の写真が、(その質の詳細をうんぬんしなければ)「簡単で手軽に」撮れるようになったわけだが、せっかく手持ち撮影ができるようになったのなら、たとえば「1000mmスナップ」なんてことをやるといままでに見なかったような写真が撮れるのではないか?と思って、その手のカメラを借りて、やってみた。人ごみの中でいろんな人の顔がクロスして写るような見たことのない写真なんかをイメージしていたが、そんな写真はまったく撮れなかった。結局は、遠くにいる人を望遠で引きつけているだけで、パパラッチのようになってしまうし、横浜大桟橋に行ってみたが、遠くの船の乗客や乗組員を、これも結局は引きつけるだけで、新しいなにかはまったく生じなかった。
 写真はガウスぼかし等を施して若干いじってみています。

 乃木坂のTOTO GALLERY.MAに、中村好文展「小屋においでよ!」を見に行く。フライヤーに書かれた中村好文の文章から引用すると
『私の「人のくらし」と「人のすまい」への関心は、「住宅ってなんだろう?」を考えることでもありました。ある時期からは住宅の原型が「小屋」にあるような気がしはじめて、南仏のル・コルビュジエの休暇小屋や、ロンドン郊外のバーナード・ショーの小屋や、岩手県花巻のの高村光太郎の小屋など、古今東西の小屋を世界各地に訪ね歩く旅を繰り返してきました。(中略)「小屋においでよ!」と題した今回の展覧会は、そんな小屋好きの建築家が敬愛をこめて「小屋」に捧げるオマージュです。』
 この展覧会に合わせて、中庭には「Hanem Hut」という一人暮らし用の小屋を実際に建てて展示してある。
 四階ではこの展示に合わせて、Hanem Hutを制作する記録と中村好文のインタビュー動画が上映されていて、ほとんどのお客さんが、この両方で四十分くらいの動画を全編熱心に見ていた。このインタビュー動画で中村氏が話している内容が興味深かった。
 一つはミシンの下に出来たスペースに新聞紙で「目隠し」をした中にこもってラジオを聴いていたはなし。もう一つは海辺の木の上にスペースを作ってそこに上って海風を受けながら読書をしていたはなし。そこから共感したり思い出したりしたことがたくさんあるので、また後日に書くかも。