あぁ紫陽花ですか

 写真はガクアジサイの装飾花です。

 さて、子供のころ住んでいた家、というのはたぶん2歳から15歳まで住んでいた戦前の木造二軒長屋のことです。玄関の横に紫陽花が植えらえていて、いちばん一般的な青い花が咲きました。1927年に生まれ2001年に亡くなった私の父は、この紫陽花の花が好きだと言っていました。ただそれだけのことでも、毎年6月になり紫陽花が咲くと、父が好きだった、ということは思い出してしまう。だからといって、そこから父のことをあれこれ考えたり思い出したりするわけでもないけれど。

 あじさいが歌詞に出て来るさだまさしの絵葉書坂という、70年代前半だったかな、そういう曲があります。

一番の最後に

♪あなたの横顔越しにシャボン玉が一斉に弾けた気がしたのはあぁ紫陽花ですか♪

と歌われるさだまさしの絵葉書坂、二番の最後には、

♪絵葉書坂を下りながらあなたはやっぱり言いましたねあぁさよならですか♪

と別れが確定しますが、なんとも軽やかな長調で、長崎の活水学園のあたりの坂道が舞台だとほかの歌詞からわかります。

 さだまさしの曲を積極的に聴くことはない、もしくはなかったけれど、五十年くらいまえの大学生たちは誰でも何曲かは聴いている(暮らしていれば聴こえてくる)ような人気歌手でした。そして、私は、この曲ともうひとつ「主人公」という曲は、当時、いい曲だなあと思ったものでした。

 というわけで、紫陽花の写真から父のことを思い出し、今度は紫陽花が出て来るさだまさしの曲を思い出し、いまYOUTUBEで絵葉書坂を聴いてみました。しかし、どうしてなんだろう?これらの曲に感じ入っていたころのわたしは、だからといって、絵葉書坂のようなさらっとした恋と別れも、あるいは主人公に歌われるような学生時代への回顧とその後の人生の岐路へ思いを馳せることも、自分の経験や人生を振り返って、そういうことが身に沁みるような経験などまったくしていない若造というか子供だったわけですよ。にも拘わらず、その曲を聴いて感じ入ったのはなんでですか?よく言う「恋に恋して」のように「失恋に恋して」とか「人生を振り返ることに恋して」というような、まとめると「大人ぶることに恋して」いたってことかな。青臭~!

 それから、五十年を経て、今度はもうここに歌われるような感情自体を「若いね~」と懐かしむような年齢になっているのに、いま絵葉書坂の方はともかく主人公の歌詞を読むと、なんだかちょっと感動してしまうような気分になったりする。やっぱり青臭~!なのかな。

さだまさし 主人公 歌詞 - 歌ネット (uta-net.com)