朝、目がさめて、トイレに行き、水をコップに一杯飲んでからベッドに戻る。ベッドから抜け出すまえに有吉佐和子著「ぷえるとりこ日記」を寝転がったまま読んで、読了する。
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昼前に家を出て、茅ヶ崎駅近くの「熊や」で海丼を食べてから都内へ。
新宿御苑前のギャラリーPlaceMで尾崎希美さんの個展「piece collection」。山本昌男のように壁面にランダムに様々なサイズの写真が散りばめてある。最大サイズはA2のカラー。8ミリで撮った動画フイルムから切り出した写真。近未来の決定的瞬間を動画で過去から記録し確実に捕捉していく・・・という結果のようにも考えられるが、実際に出来上がった写真はそういうことではなくて、改めてセレクトするときに、スチルの決定的瞬間とは異なる、あとから選ぶ時にのみ選択眼に叶う新たな決定的瞬間の提示というようなことが起きているようにも感じる。白い前脚がどうにかなってしまったかのような猫や、なにやら暗闇の中から吠え掛かってくるような犬、等々。奇妙な瞬間が写っている。尾崎さんは最近この写真展の作品を作った8mmカメラからローライフレックスにメイン機材を変えた。先月と今日、新作6×6の作品を須田塾の折、見せていただいた。最新作の6×6も素晴らしい。そして8mmから切り取った作品と違って、6×6はとてもしゃれている。でも同じ人間が撮っているのだから、一方が奇妙で一方がしゃれていると感じるけど、その奥のどこかでは同じはずなのだ。
すぐ近くの蒼穹社で谷口雅彦「他火1」展。数ヶ月前にネット古書店でこの人の写真集「日々の旅」を買った。「日々の旅」は昭和歌謡に描かれているような演歌に歌われるような未練や慕情や恋情の写真だったと思う。
蒼穹社の古書棚から西脇順三郎の評伝本を見つけ出し購入。同時に小山清の短編集も。
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そのあと、神田珈琲園にて10月第四週組の須田一政写真塾例会に参加する。
須田先生、今日は誰に対してもほとんどコメントなし。Tさんに何かコメントを、と促され、Hさんの写真にコメントされる。
「何がいいのか言葉で表現できないのだが、でもとにかく何か伝わってくるような写真。言葉で言い表せないがとにかくどこかいいと感じる、そういうの、僕は好きですよ」
と話される。にこにこされている。
K村さんの作品、ますますいい。暮らしが見え隠れする度合が増えている感じ。T澤さんの写真は、日本昔話、それも奇談を、夜更かしして聞かされているような怖さ。誰かに寄り添っていたい気分。
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今日わたしが持って行った写真の中から一枚(上の写真)。藤沢駅近くの古びた旅館の玄関脇を撮ったもの。「光と影」がきれい、との感想をおっしゃってくださったのはOさんだったかしら、ありがとうございます。同じ場所であっても、光は一瞬たりとも同じではない。そう考えるとどこを撮っても二度と巡り会えない光景なのだと思う。そしてその一瞬一瞬のどれもが、人が社会的価値から意味づけした決定的瞬間ではなく、別の価値に置き換えることでうまれた従来とは異なる新たな決定的瞬間であってもおかしくない。
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神田から東京までEOS1Nをぶらさげて歩く。しかし何故だかここぞと思う瞬間にシャッターを押せない。
帰路、東京駅オアゾの書店で保坂和志著新刊「小説、世界の奏でる音楽」を買う。
電車の中では西脇順三郎の評伝を読み始める。
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- 作者: 保坂和志
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