特別な場所


 昨日の夕方から一人で実家に行き一泊した。今朝、母とトーストとバナナを食べた。そのあとカメラを持って近所を一回りしてきた。実家から海までは歩いて数分で、ちょっと西に歩けば、金目川(河口付近では花水川とも言う)の河口にがある。実家は私が高校一年の冬休みに、同じ平塚市内の別の場所から、いまの場所に引っ越してきた。しょっちゅう海へ行っていた。釣りをしたり、写真を撮りに行ったり、花火をしたり、キャッチボールをしたり、たき火をしたり。一人だったり、近所のKくんと一緒だったり、遊びに来た友達と大勢だったり。ここにはいちいち書かないけれど、もっとずっと具体的なことをたくさん思い出す。だからこの場所は私にとって、もしくは私に記憶されたエピソードの登場回数において、特別な場所なのに違いない。
 今日は、急に寒くなったせいや、雨模様のせいや、波が高くないせいでだと思うけど、ほとんど誰もいなかった。釣りをしている人が二人、西に向かって歩いている人一人、ゴルフの練習をしている人一人。それだけだった。

 昨日、家族のSがTSUTAYAから借りてきた邦画「パンドラの函」を見た。私は一昨年だったか、劇場で見ているので二度目だったから「ながら見」をしていた。最後のテロップが流れたところで、Sがロケ地が南三陸町なんだ!と教えてくれた。
 調べてみたら主たるロケ地は旧清水(しみ)小学校というところで、検索ページの地図写真を見たらどうやら津波で完全になくなってしまっているようだった。この映画に助演していたミュージシャン/女優/小説家/詩人の川上未映子のブログに震災後に何かの新聞だったか雑誌だったかに発表した南三陸町のことを書いた文章が転載されているのを読んだ。「川上未映子の純粋悲性批判」というブログです。