雲の湧くところ


 母のいる施設に誕生日祝いのTシャツを届けに行く。平塚市は七夕祭の最中だが、渋滞で困ることもない。湘南平に寄り道。テレビ塔から東を望むと江の島のさらに向こう、三浦半島の上だろうか、夏らしい雲が立っている。午後には積乱雲になってもっと高く伸びるのだろうか。風向きのせいか電車が平塚駅大磯駅のあいだを走って行く音がよく聞こえる。見ると、特急踊り子や夜の湘南ライナーの一部に使われている白い地に緑の模様の入った塗装の車両。もうじきなくなるらしい。最近この車両を撮っている鉄の人をよく見かけるので、会社の撮り鉄の人に聞いてみたらそう言っていた。国鉄時代の車両っていよいよもうなくなるのだろうか。小高い山?丘?から平野の住宅地や田園風景の中を一本の線になっているのがよくわかる電車が突っ切って行くのを見ると、なんかこう日々の些末な問題や調整必要項目や、まぁ些細な悩みや小言の類なんか、もういいやって気がして、あ、すなわちこれ気が大きくなる・・・っていうより、自分も含めて傍観者になって楽観的になる?よくわかりませんが。
 梶井基次郎の城のある町の話ってどこか高台に上る場面があったっけ?むかし読んだけどよく覚えていない。でも夏の暮れ時に親戚数人でどこかに上ったような・・・気がするだけか?
 以前からそうだったのか、最近とくにそうなのか?町を見下ろす高い場所にいるのがいい。ときどき午前に湘南平に来るが、月の出の時間とか、見下ろせるどこかの町で花火大会をやっているときとか、あるいは新幹線の線路点検用車両のドクターイエローが走るときとか、そういう「特別な」に日来るのもいいかもしれない。と思う一方で、だめだめ、そんなときではなく、なにも期待せずにここに来た日にたまたま出会った風景が、それは絶景ではなくても大事なのだと思わなければ。
 今度は西方を見渡せる展望台へと移動する。右へ右へと相当な速度で動いて行く雲の向こうに、雲と高さ競争をするように見え隠れする富士山を見つける。遠くにわずかに。誰も気が付いていないようだった。480mm(相当)の超望遠でそんな富士山を撮る。横山大観の描いた富士山のような実景の富士山だと思う。なにより興味深かったのは、下にも写真を載せたが、酒匂川の河口のところからだろうか、雲が沸いてそれが右へ(北へ)と筋になってずっとたなびいていくのを見たこと。会場の気温と湿度、陸上(川上)の気温と湿度、飽和水蒸気だかの関係か?それにしてもこんなにはっきりと雲が生成されるところって見えるんですねえ。