寒いと思ったら


 年始の休みのときだったか、いや、そのもうちょっとあとだったろうか、ユニクロに行ったらヒートテックの下着を特価で売っている日だったので、タイツ(股引)とシャツを買った。それから、最初はすごく寒い日に、そのうちに毎日のように、その下着とくに股引の方を通常下着にさらに重ね着して付けているようになっていた(そりゃそうだ、あれを直接パンツ兼用で着るってのはちょっと変だろう)。うーん、常習化の典型ですね、これも。金曜日、3/2の朝の6時ころのニュースで、ときどき懐かしのハマトラみたいな若々しい装いで登場する気象キャスターの渡辺蘭アナウンサー(?)が、今朝は暖かいです!とおっしゃるから、そうかそうか、と納得して、常習化しているヒートテック下着を重ねずに会社に行った。そうしたら、とても寒いのである。以上のとおり、寒いと感じる原因は明確なのにもかかわらず、昨日の金曜からずっと「なんだか寒気がする」とか「これは風邪かもしれない」とかぶつぶつと言っていた。
 今日の土曜日、3/3。午前11時に、持病の高血圧と不整脈の診察と処方をもらうために、病院に行く。病院では聴診器を胸に当ててもらうし、ときには心電図を取る。そういうときにサクサクと行動したいものだ、と思って、今日も下着の重ね着をせずに病院に出かけて、ネット予約で行くと待たずに済むからいいですね、11時20分には病院と薬局終了。帰宅して、今日も寒い。今日は渡辺蘭アナウンサーのひとことによる幻惑はなかったし、天気は晴れているのに、寒い。午後、家族のSと藤沢まで買い物に行くことにして自家用車を運転していく。その際に、あれ?あれ?と気が付いた。昨日からヒートテックを重ね着していない。それでも、いざはいてみるまでは、ヒートテックになじんでいたのにそのヒートテックを重ね着していないことがこの寒さを感じる主要因だとは、なぜかそのときにはそう思っていなかった。が!はいてみたら、二日間悩んでいた寒さはあっと言う間に去って行ったのである。そうなって初めて、この当たり前の原因がはっきりと認識したのだった。そういうのが今日のこと。
 買い物忘備録。藤沢駅の南口北口通路に出ていた古書店で「ボルヘス怪奇譚集」購入。その他、プリンターのインクとか、USBメモリー。藤沢駅近くのカメラ店の中古カメラ委託売り場をのぞいてみる。数週間前に超美品で出ていたCONTAX-T55000円はもうない。MinoltaCLE35000円(本体のみ)などをガラス越しに少しのあいだ眺める。それだけです。

 水曜日は雪がたくさん降った。木曜日の朝5時半、北関東。駅まで歩く。いつもは自転車で十数分のところを、歩くと25分くらい。前日の大雪が残っているから、滑らないように最新の注意をして歩く。午後から出張で、そのときにはスーツで革靴で行きたい。スーツは着ているが、軽量が売りの、RegalWalkerの黒いビジネスシューズは、軽量の分、防水性に乏しく、よってこの駅までの25分のあいだはスノウトレッキングシューズみたいなものを履いて行くことにする。だからビジネスシューズはビジネスバッグにむりくり突っ込んで行く。
 いつもは手に持っているビジネスバッグは、もし滑ったときに手が空いていないと危ないから、手には持たずに肩にクロスで下げている。
 そのときには気が付かなかったが、よほど身体のあちらこちらに無理をしながら、あるいは緊張しながら、滑らないように歩いていたらしい。金曜になると、肩がものすごく凝っているのに気が付いた。金曜の夜は身体全体が緊張から解き放たれないままのような感じで、眠りすら浅い。熟睡できず。頭痛もあり。

 新芥川賞作家、円城塔著「Boy's Surface」(短編4編)を読んでいる。昨年だったか一昨年だったか、同じ著者の「Self-Reference ENGINE」を読んだことがあって、そのときの感想というか印象は、要するに「理解できなかった」といった思いなのだった。これを書いた著者もしくはこれを読解できる科学に関する知識を持っている読者が理解しているであろうと推測する、一般の読書のときに読者が「付いて行っている」と感じる理解レベルには、まったく及ばないのである。だから、文句を言いたくなったり、途中で投げ出したくなったり、なんでこの意味不明の文章を視線が追うのに数時間もかけているのか?と思ったり、そういう感じを確かに持った。しかし、一方で、詩を読むときになんとなく伝わってくる、その詩から感じる、理解とは別次元の、自分に起きるある感覚や味わい、それと似て、円城塔の文章を視線で追いかけるときに現れる理解を超えても存在する、そこに発生する感覚や味わいがあって、それを頼りにして放り出すことを「しない」ことに折り合いをつけていく。その結果、なんとか「Self-Reference ENGINE」を読み終わって、読み終わると何も理解できてなかったのに、でもちょっと理解できたような気分にはなれた。奇妙な読書体験ということだろう。
 それでいま読んでいる上記の短編集にも、同様な感じで読書が進む。だから進みは異常に遅い。二編目の「Goldberg Invariant」は全八章の番号が7→2→5といった順で構成されているが、一回目に読んだときには何が何だかわからない。でもためしに二回目に1から順になるように、ページを行ったり来たりして読んでみた。そうしたら一回目と二回目と比べると、二回目の方がなんか腑に落ちた気がしたりもするのだった。

Boy’s Surface (ハヤカワ文庫JA)

Boy’s Surface (ハヤカワ文庫JA)