最近の東海道線東京熱海間で多用されている十五両編成の電車では、一番前の方と一番後ろの方の、それぞれ二車両くらいにだけ四人で一括りの、その名称で正しいのか自信はないが「ボックス席」がある。それ以外の車両はグリーン車(別途グリーン料金が発生する相当昔で言えば一等車だ。いま、ちょっとウィキってみたら一等からグリーンに名前が変わったのは1965年。私は小学校の低学年だったが名前が変わったことをなんとなく覚えている。)を除くと、一車両に四つあるドアとドアのあいだに、窓を背にして長いシートが配置された、地下鉄などであるいは近距離輸送用車両で一番当たり前のシート構成になっている。
私は進行方向に向いて座るのが良いので、時間に余裕があれば一番前か後まで歩いていき、ボックスシートのうち、進行方向を向いた窓側の席に座ることにしている。四つの席を、進行方向に向いた窓側をA、その向かい側になる進行方向を背にした窓側をB、Aの隣の進行方向を向いた通路側をC、その向かいの進行方向を背にした通路側をDとする。
一月二日に清水まで行って、鮪の寿司を食べて、また帰ってくるために清水で乗った電車は短い6両だったかの編成で熱海行きだった。そして熱海からは上述のような15両編成の東京行きに乗り換えた。まだ発車まで時間があり客も少なくて、私は2号車のボックスシートのAに座り、Bに誰もいないから比較的自由に足を伸ばせるし、Cにも誰もいないから荷物をCに置いていた。そのうちに乗客は増えてきたもののまだ私のボックスシートには誰も来ないからそんな風にしていたわけだが、発車間際になり、私と同じくらいの年配の夫婦、私とは全く違う体育会系の日に焼けた大男と無口な奥さんが乗ってきた。私はCに置いた自分の荷物を膝の上に置き、席を空ける。すると私の正面のB席に奥さんが座り私の隣のCにはその大男が座った。Dには誰も来なかった。
結果として、私は荷物を膝に置き、正面に奥さんが座ったので足も引っ込めて、窮屈になる。一方、大男は自分の前の空いているD席に荷物を置き、足も悠々伸ばせることになる。
だからどうだってほどのこともない。世の中、そういうもんだ。