熊本へ


半年くらい前から、9月の五連休に、息子を除く三人で家族旅行に熊本に行く計画を立てていた。三年前に、黒川温泉と別府温泉を宿泊地にして、阿蘇熊本空港でレンタカーを借りて、大分空港から帰ると言う夫婦旅行をしてから年に一回のペースで九州へ、それも阿蘇の回りが多いのだが、旅行に行っている。結果として。二年前は霧島に行った。本当は屋久島と霧島で二泊の予定が台風とか用事が出来たのとで一泊になった。昨年は南阿蘇の公共の宿みたいな温泉ホテルと湯布院を宿泊地として、このときは高千穂も行ってみた。今年は娘も一緒で、三年前や昨年の阿蘇の回りのドライブが、即ち、ミルクロードや山並みハイウェイのドライブが楽しかったので、娘にとってははじめてになる阿蘇回りのドライブを再び計画し、妻もまだ行ったことがない熊本市内もコースに入れて、一泊目は南阿蘇鉄道より北にある温泉を予約し、二泊目は熊本市内のホテルサンルートの三人部屋をとっておいた。サンルートの三人部屋は和洋室で、ベッド二つに、あと一人分は畳の領域に蒲団を敷くのである。レンタカーもいつものマーチやキューブのクラスの車種お任せではなく、アクセラのセダンを指定しておいた。
そして旅行の一週間前になって、阿蘇中岳が噴火した。ニュースを知って、だいたいが今のニュースはおおげさにものごとを伝えて何でもバズが起きやすいように報道する傾向があるのかもしれないが、そうは言っても自然のことは、大震災の教訓もあって、最悪の事態を想定すべきだと思う。そんな訳で、ヤバそうだと判断して、キャンセル料まで払って一泊目の宿をキャンセルした。あと二日早く噴火してたらキャンセルするにしてもキャンセル料はかからなかった。なんて、こう言うことが起きるとやたらにケチ臭くなるのだった。その後の報道によると、阿蘇周辺の宿では、噴火の直後にたくさんのキャンセルが出て、そのあと今度は噴火見物の客が一斉に予約をしたらしい。キャンセル料も入りかつ満室になった宿はホクホクだろうか。キャンセルした人達の集団と、噴火後にそのキャンセルを待ってましたとばかり予約した人達の集団とにそれぞれ性格テストのようなことをすると、明瞭な差異が見られるのかな。星座やら血液型やらよりは、明確な差があるかもしれない。リスクを覚悟でエンタテイメントをとる集団と、リスクを考慮して安全を選ぶ集団と。
あるいは慌ててキャンセルしたあとに様子を見ていたらキャンセルするほどのことではなかったと思ってちょっと後悔するもののキャンセル料まで払った上に再度また予約をするなんてことはまずしないだろう。これは妙なプライドのようなことだ。自分の判断が間違っていたと認めて、キャンセル料分を無駄にしてでも、やり直すようなことは、プライドのようなことからなかなか出来ない。
キャンセル後に天草と熊本の宿を調べてみたら、熊本市内のシティホテルの三人部屋、正確にはツインの部屋にエクストラベッドで三人泊まれるようになる部屋が唯一空いていた。ほかに選択肢かないのだから、そのホテルを予約した。
噴火した日には旅行そのものを全キャンセルした方がいいんじゃないか、とか、ずっと噴火の噴煙が高く上がっていると、飛行機が阿蘇熊本空港に発着出来ずに福岡に行かされるんじゃないかとか、いろんな心配が起きたが、結果としてはここまでの変更でなんとかなった。いや、正確には最初の旅程でなにも変えなくても大丈夫だったことになるが、いつ噴火するか気が気ではなくどきどきしながら過ごす、家の家族の面々の性格からしてそうなっただろうから、一泊目を変更したのは仕方のないところだった。

と、ここまで書いてきてふと思った。阿蘇が噴火したので、阿蘇の近くに予約しておいた宿をキャンセルして、急遽、熊本市内二泊に変更したものの、家族の三人で熊本に旅行に行ってきました。と言うことを言っているだけなのに、なんでこんなに長い文章になるのかな。読む方もこれじゃいやになっちゃうよねえ。

気をとり直して。新しいボーイング787あたりからか、それとも何かの新技術が開発されてそれを搭載すれば電子機器からの悪影響が古い飛行機に遡って軽減出来たのか?最近は離着陸時に、全ての電子機器の電源をオフする必要がなくなり、電波の発しない状態の電子機器は飛行機内でもいつでもOKになった。そこでGPSを使わず、電波を発しない状態にしたコンデジで離陸から着陸まで窓から写真を撮る。座っていたのは34のAで主翼よりは後方で景色は主翼にさえぎられることなく見渡せるがジェットエンジンから排出される熱い排出ガスの影響で、どこからどこまでがガスの流れてるところかその境界はよく見えないものの、ガス領域越しの部分の風景はぼんやりと滲むようにボケている。写真に撮って拡大すると一目瞭然にわかる。離陸時には特に、さかんにエンジンが燃焼しているらしく、このボケる領域が多いようだ。定常飛行になるとそう言う領域が減る。
進行方向に向かって左側の窓からは阿蘇の中岳が見えるのを知っていたので席を予約するときからそっち側をとっておいた。阿蘇の噴煙は、一週間前のニュースで見たような風景ではもうなくて、昨年に飛行機から眺めたときと変わらないか、むしろ少ないようだった。
飛行機から下を見ていて、陸の、特に海岸線の形を見ていると、あ、相模湾とか、美保の松原とか、渥美半島とか、淡路島とか、神戸の街の上とか、小豆島とか、松山の街とか、わかるのが面白い。すぐにはわからない。日本地図の地図帳のページを見ているようには見えない。上空10㎞くらいから見下ろして見える海岸線は、地図帳を殆ど目が地図帳にくっつけるくらいまで下ろしたところから鋭角に斜めに見ていることになる。真下の海岸線は、まぁ、地図帳の通り。そこから伸びている、南に伸びてる伊豆半島紀伊半島やは鋭角な斜めの視点からだから地図帳のようには見えない。そのことも含め、頭の中で地図帳と実際の風景の視点を修正しながら翻訳して理解するのが面白い。四国の石鎚山がどれだかまではわからないが、その四国最高峰を含むのだろう山並を遠方に眺めると幾重にも重なっているその山の風景は美しい。

なんてダラダラ書いていると書いている方も飽きてしまうわけだ。この日は天草のずっと奥の教会の方までは大渋滞でとても辿り着けないものの、天草五橋の三つ目くらいまで進み、レトロな水族館に行ってみてから引き返してきました。
熊本市内はちょうど祭りの日でこれまた大渋滞。しかし夜遅くに予約していた熊本料理なども食べられる居酒屋で食べた辛子蓮根は素晴らしかった。