新宿


 新宿PHOTOGRAPHER'S GALLERY 笹岡啓子展 → 銀座AKIKO NAGASAWA 森山大道展 → 品川キヤノンギャラリーS 宮本龍司展と青春18切符ポスター展と見て回る。
 蒸し暑い日本の夏がいよいよ始まったと感じられるような梅雨の中休みの土曜日だった。Tシャツの背中に汗が流れていく。それでも新宿の街には、海の方から吹いてくるのだろうか、ビルの隙間を通り抜けて行く風が気持ちがよい。真夏になればもっと気温が上がり、もっと湿度も上がるのだろう。今日は32℃で40%弱。たしかに湿度はまだ低い。
 一眼レフカメラのファインダーから街を見ている。例えばこの写真を撮ったときには、街の景色が素敵だと思っていた。ファインダの中を人や車が動いているのを、ファインダーが四角く切り取られているからか、映画を見ているような気分で見ている。写真にも写っている赤いスカートの人が右から左へ動いている、その赤が一つの注視点になっていて写真を撮ろうと言う動機になっているが、その向こうにある白い建物(伊勢丹の駐車場)や街路樹は最初から必要な背景となっている。二枚ほど撮って、それでもまだファインダーから目を放さずにいると、タクシーがやって来て赤信号で停まった。画面を左隅にそのタクシーを置く方がいいように思う。こんなことを瞬間に考えると言うのか判断と言うのか、そうしながら写真を写す。スマホ自転車の人はいなくてもよかったが入ってきたのだからしゃあない。ありきたりでなにもない、そう言う写真にするには、スマホ自転車の人はちょっと強い被写体要素だろう。

 新宿と言えば森山さんのようなモノクロでアレブレのスナップのメッカのようだろうが、その表現を1960年や70年代に必然としたのだろう、当時の欲望(あるいは熱意)うずまく人々と、その欲望(あるいは熱意)を内包してエネルギーを秘めた街が、今日のこの時間には少なくとも私には見えないし別に見たくもない。もう街は漂白された。そういう感じがするのだった。いや、こちらが漂白されて同時代に属す資格を失ったのかもしれない。