無題

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  伝えないと、思いを言葉に変えて届けないと、もう間に合わなくなるかもしれないのに、言葉に変えるというところで、自分の言葉が自分の思いをうまく置き換えて、嘘偽りのないものになっているという自信がない。言葉などビンゴゲームのたまたまそこに16個ある二桁の数字のような不自由さで、残りの84個の数字はそこに当てはまらず空に消えてしまう。ひとつ隣の数字があったところで代用なんかできない。そして当てはまらない16の数字を手にしたまま途方にくれるのだ。工事現場は、いつになったら工事現場ではなくなるのか。それから信号が緑になり、ブレーキペダルを踏んでいた右足を動かして、アクセルペダルを踏む。車が走り出すことは当たり前のようで、言葉の不自由さよりも機械の連動機構はずっと確かだった。さらに言うと、金星の明るい光はいつまでも付いてくる。オートマチックに前を行く自動車から適当な車間距離を置いて車を走らせる。カーラジオからスロー・バラードが流れればいいのにな。

 ぼくら夢を見たのさ、とってもよく似た夢を(RC・サクセション「スロー・バラード」より)