誤って大を注文


 正午、自転車に乗って家を出発。なんとなく読んでみたい本が何冊かあるので、藤沢のブックオフまで行ってみることにする(茅ヶ崎ブックオフは昨日チェック済み)。昨日書店(古書店ではなく)で手に取った山崎ナオコーラ著「長い終わりが始まる」とか、これはまだ古書店に流れてはいないだろうがいしいしんじ著「四とそれ以上の国」とか、今回芥川賞を受賞したが以前からちょっと気になっていた津村記久子著「カソウスキの行方」とか。
 ところで昨日の気温、茅ヶ崎は20℃だったが、小田原の最高気温は25℃、静岡では26℃だったらしい。今朝の朝日の朝刊に半袖姿で銀座を歩く人を撮った写真が使われていたが、その写真をよく見ると、半袖で赤ちゃんを抱いている女性の後方に、黒いコートを羽織った人なんかもいて、混乱ぶりがよく判る。私は、昨日、下着のシャツ+長袖コットンシャツ+ウールのカーディガンだったが、通りすぎる人の中にはウールのダッフルコートにマフラーを巻いている人もいたものね。昨日は室内温度の方が、急に上がってしまった外気温より寒かったので、皆さん面食らったのだろう。
 今日は昨日ほどでもないがまだ3月下旬くらいの陽気だ。昨日は6月の陽気だったそうだ。そこで今日はウールのカーディガンが、さらに薄着のコットンセーターみたいのにして出発。念のために、デイバッグにウインドブレーカー風の羽織るやつを一枚いれておいたが使わなかった。
 茅ヶ崎東海道線に沿った南側のバス通り、桜通、を辻堂方面へと進む。この道沿いの店にはまったく縁がないが、珈琲豆や珈琲を入れる道具を売っている新しい店や、人が大勢待っているラーメン屋や、ちょっと住宅地に入ったところにある豆腐屋、地味なピッツァ屋、など、寄ってみたい店も多い。が、どこにも立ち寄らずえっさほいさと自転車を漕ぐ。自転車はサイクル・ボーイの谷さんに作ってもらった18段だったか21段だったか変速のオリジナル自転車なのだが、えっさほいさと一生懸命漕いで、太ももが痛くなっても、何故だかママチャリのおじさんやお姉さんに抜かされる。
 よくよく調べたら、後輪のリムが歪んでいるらしく、後輪が一回転するあいだの360度のうちの60度分くらいの範囲でブレーキパッドのゴムにリムがこすっているらしい。要するに漕いでいる時間の1/6に軽いブレーキがかかっているということ。これではなんだか筋トレみたいだ。リムが歪んだのは数ヶ月前、実はもう一台持っていた自転車を捨てるときに、まだ使えそうなサドルとかを外して、それを入れた袋を左手に持って某所に届けに自転車に乗っていたときに、その袋が後輪に絡まったからだろう。捨ててしまった自転車の怨念がなせる業なのか!
 えっさほいさと漕ぎつつも、コンパクトデジカメは首にぶら下げていて、ときどき目に止まったものがあると、キキキーっとブレーキをかけて停まり写真を撮る。辻堂元町まで来たら、いつもここに来ると定番撮影ポイントとなっている銭湯とか、青いトタンをくりぬいて作ってある赤いポストとか、昆虫のナナフシみたいな枝ぶりの建物脇に伸びている植物とかを撮る。上の写真の八百屋も辻堂元町の店。これいまよく見たら、なんだか懐かしい感じの八百屋さんで。白黒の野球部と思わしき連中の写った写真とかが飾られていたり、誰かのサインの書かれた色紙が見えたり。この手前の裸電球のちょっと奥、天井がぶら下がっているのは蛍光灯なのかな?この形は何の機能を示唆しているのかな。
 辻堂と藤沢のあいだに広大な面積にあったパナソニックの冷蔵庫の工場が取り壊され、いまは整地工事が入っている。あとにまたパナソニックの事業所が出来るのか、それとも土地は売られて、新たな町やショッピングモールが出来るのか、計画のことは知らないが、とにかく整地したなかにブルドーザーとかが、休日なので三々五々って感じでぽつんぽつんと停めてある、そういう風景がいい。いつも電車から見て、いいなあ、と思っていた。今日は曇っていて、晴れていたほうがよかった気もするが、フェンスの隙間からレンズを突っ込んで何枚か撮る。
 藤沢に着き、ブックオフ含め古本屋何軒か見て回るが、上に書いたような「あらかじめ欲しかった本」には出会えない。買ったのはブック・サーカスの屋外のワゴンから見つけた小野正嗣著「マイクロバス」。以前、この著者の「にぎやかな湾に背負われた船」を読んだが若干難解だったなあ。マイクロバス、帯に書かれた「口のきけない青年は、入り組んだ海岸線に沿って、ただバスを走らせ続ける。まるで世界を縫い合わせるかのように。」帯の文章に「だまされて」失敗した事例は幾度もあれど、これはどうでしょうか?
 ほかにこれは予定していた新刊のちくま新書下條信輔著「サブリミナル・インパクト」を購入。
 その後、まつやで昼飯、迷っているうちに自動販売機のチケットを買う順番が来る。お金を入れてもまだ迷っていて、でも列の後ろに人がいて、目についたところから慌てて「豚丼」+「生野菜サラダ」にする。ところが席に座ってチケットを渡したらおばちゃんが「はい、豚丼大盛」と厨房に言っている。間違えて大盛りを買ってしまったが、いまさら「押し間違えました」とも言えず、結局豚丼の「豚」部分は全部食べたけれど、ご飯は少し食べきれず残した。

サブリミナル・インパクト―情動と潜在認知の現代 (ちくま新書)

サブリミナル・インパクト―情動と潜在認知の現代 (ちくま新書)