冷気


写真は15日のものです。

 茅ヶ崎の駅を降りると、隣のホームが真っ暗だったり駅構内の蛍光灯も半分くらいしか点灯していないし、街も節電のためだろう、いつもよりずっと暗い。そういう街を歩いていると、何故か懐かしさを感じた。なぜか?きっと自分が小学生や中学生のころ、夜には街中でもこのくらいの暗さだったのではないか。だんだんと街が必要以上に明るくなっていた。本来の夜の街はこのくらいの暗さであるべきで、いやべきかどうかはどうでもいいのだが、このくらいの暗さの中でこそ生まれていた文化があったのかもしれないな。

 先日読んだ木内昇著「茗荷谷の猫」や、いま読んでいる種村季弘著「書物漫遊記」の両方に内田百輭著「冥途」が出てきて、読み直してみたくなる。もしかしたら家の本棚にあるかもしれないが、探すのも面倒なので、ブックオフでも見ていこうと思う。それで、もし古本屋が停電で暗くて、それでも営業していたと仮定して、入り口で客に懐中電灯を配っていたとするとどうだろうか?という妄想が浮かんだ。懐中電灯の光の輪の中に浮かんだ本の背表紙を順に見ていくと、きっと、いつもとは違う、いつもは決して興味が向かない本に手が伸びるのではないか?それでまた新たな本の魅力に絡め取られる・・・とか。

 三月中旬にしては随分と寒い。