雨の中、都内写真ギャラリーめぐり

　連休中に一日くらいは都内で写真展をいくつかめぐってみようと思っていたので、雨中ではあったもののめげずに出かける。湘南新宿ラインに乗って茅ヶ崎から渋谷へ、約1時間。古書東塔堂店内にて永沼敦子写真展「Golden Harvest」。Harvestという単語からは即座にニール・ヤングの同名のアルバムと、The Bandの2枚目最後に収録されているKing Harvestが出てくる。ニール・ヤングのアルバムにはHeart of Goldが収録されていて、その曲が、私が高校生だったころにたぶん南こうせつがDJをやっている深夜放送で一度ならず流れた。そのたびにDJのこうせつ氏が、「歌はなんだかへたくそなんだけどでも味がある」とこれまた一度ならずコメントしていたように思う。Harvestは収穫って意味で、ニール・ヤングにしてもザ・バンドにしても、たぶん南部の農業、たとえば綿花栽培とかトウモロコシとかトマトとか小麦とかの大規模栽培なんだろうか、そういう人たちのことを歌っているのかな？歌詞なんかチェックしてないから判らないけど、まあ土臭いロックなのだからそうなんだろうと勝手に推定。
　と書いて、それはあんまりだろうと、一応ザ・バンドのキング・ハーベストの歌詞を調べてみたのだけれど、意外にも日本語訳がどこにも見つからなかった。でもまあ英語を読んでうわべだけ理解することにしても、やはり農業の方の歌のようでした。
　と、書いているうちにどんどん写真展のことから逸脱してしまうのだけれど、すなわち、写真家の永沼さんとやらの意図とはまったく無関係な思い込みなのだが、そういう私にとっての若いころの音楽を連想させるキーワードみたいなHarvestなわけで、それでのこのこと鑑賞に出かけた。もちろん、東塔堂に一度行ってみたかったということもあって。古書の写真集、たくさん置いてありました。すごく貴重なものも。
　写真展のカードには「土のかおりあふれ　ふくらむつぼみは希望になる　空にみどりのセイルをあげ　枯れ木に祈りをささぐ」とある。展示スペースに限りもあり、ちょっとものたりない。小型のプリントは枚数を絞ってでも大きなサイズで見たかった。すがすがしい空気が写っていた。http://totodo.jp/hpgen/HPB/entries/11.html
　雨の中とぼとぼと歩き、渋谷駅から地下鉄副都心線で一駅だけ明治神宮前駅で下車。そこから結構な距離を歩いて千駄ヶ谷のslope galleryにて山田博之写真展Tuesday。とある本屋さんからの新着案内がメールで届くのだが、そこに載っていた写真集がよさそうだったので、調べてみたらここで写真展開催中とわかったので行ってみた。buenobooksという出版社がやっているギャラリーで、サーフィンとかスケボーとかのボーダーから生まれた傾向の作品を扱うところだそうです。とは言っても、この山田博之写真集（写真展）はアラスカに暮らす人たちの中にもぐりこんで撮ったようなアラスカの日常のスナップでボーダー文化とどう関係していたのかな。優しさと厳しさを併せ持った写真で色調もやわらか。http://www.buenobooks.com/slopegallery/index.html
　そこから雨のなかさらにとぼとぼとぼとぼとぼとぼと歩き続ける。ワタリウム美術館手前の写真集専門展シェルフに立ち寄る。http://www.shelf.ne.jp/欲しい写真集がたくさんあって・・・でも財布の中身と相談しながら絞り込む。ポール・フスコ「ＲＦＫ」が特価だったので購入。昨年（一昨年？）都写美で見た写真の写真集で、ケネディ葬送の列車内から、沿線で死者を見送る人たちをスナップした写真が圧巻。当時のアメリカ文化が垣間見える。
　買いたかったが買わなかったのは野川かさねのまたまた出たのか・・・新しい写真集「ウィンター・マウンテン」とか、ライアン・マッギンリーのzine、などなど。
　そこからさらに歩き続けて表参道交差点の近くのギャラリー360°では山崎博「写真的事件」。http://www.360.co.jp/index.html
　表参道駅近くのドトールで休憩。そこで家族のＳと待ち合わせし、二人でrathole galleryで北島敬三「ISOLATED PLACES」http://www.ratholegallery.com/を見る。北島敬三の写真は大きく延ばされてかつ緻密な解像の写真で、そうすると離れるどころか、どんどん写真に接近して、細部を見てしまう。するとタイトル通りの孤立したようなそこいらのそっけない片隅の、町の中のつぶれた駐車場とか、取り壊されたあとが取りあえず駐車場になっているビルのはざまとか、そういうありふれて、従来的にはどこもフォトジェニックではないような被写体が、とても面白く見えるのだった。
　歩き疲れました。

Paul Fusco: RFK