昨年の読書報告


 写真は、昨日、富士市吉原でカメラ店のウインドウを撮ったものです。引き伸ばし機が飾られている!私の持っているラッキーの70MR型は、最後に使ったのが、たぶん2004年だったかな。この飾られている引き伸ばし機と同じ(同系列)かもしれないな、もしかしたら飾られているのは60型かも。引き伸ばしをしている夜は、たいていはまだ引き伸ばしをやり続けたいと思いつつも「さすがにもう寝なくちゃね、明日もあるし」とか「もう明るくなってきてしまうから時間切れだ」とか、「現像液がもうへたってきてこれ以上はきびしそうだ」とかいった理由があって、やむなく終えることが多かったと思う。だから最後に引き伸ばし作業をしたときにも、きっとそういう気分で、だからこれが最後の引き伸ばしになるかもしれない(あるいはその後十年近く、もう引き伸ばしをやらないだろう)、なんて思わなかったに違いない。いまは、もう引き伸ばしはやらないんじゃないかな?という思いが強い。
 なんて書くと、ふとやってみたりするかな?写真の右側に写っているのは女優の田中麗奈さんだろうか?ブルー・ヌーボーってなんだろう?
 昨日はこの商店街にあった本屋に入ってみた。自動ドアではないし、ガラスドアにいっぱいちらし類が貼ってあって、店内に入るのに結構勇気が入りました。カウンターに店番の女性が一人、通りを背にするように座っていて、その両側に入口のドアがある。そういえば、町の本屋さんていうのはみんなこんなつくりだった。私が子供のころに家の近くにあった「鈴木書店」もそういう構造だったし、実家のそばにあった、もう店を閉めてしまった「花水書店」も同じだった。そして壁に沿って左と右と奥の三方は高い書棚になっていて、店の中央は平置きと表紙をこちらに向けて置くような雑誌棚だったかな?それとも背表紙を見せる普通の書棚だったかな、よく覚えていないが、その中央の棚の高さが低くて、右側の入り口から入っても左奥が見通せるつくりだった。雑誌はともかく、置いてある本の中にはアマゾンの古書通販で言えば「ほぼ新品」「良い」に程遠いくらい痛んでいるものもあって、十年以上も売れないままなのではないか?でもそういう本の中に、なんだか興味を惹かれるものもあった。京都の三月書房のように新しい本でも特別価格で売ったりすれば面白いんじゃないのかな?たぶん絶版もあって実は高値で取引されている本が埋もれている可能性はないのだろうか?
 なんて下世話な(?)感想を持ちながら、ほかに客が一人もいない店内をぐるりと回って行ったら、入口付近の棚に、富士市が主催しているのだろうか、市民文芸コンテストみたいなものの入賞作を集めた本があって、ちょっと興味を惹かれた(買わなかったけど、旅先でこういうのを買って、帰りの電車で読む、なんて行為もなかなかいいのではないか?)。ほかにも静岡新書(ってこれも正しい名前じゃないけど)といったシリーズがあり、これは県が後押しでもしているのだろうか?たとえばオートバイの開発の歴史をまとめた本がある。こういう地方ならではの本があると面白いけれど、観光地でないから厳しいかもしれないですね。
 がんばれ!町の本屋さん!
 子供のころの鈴木書店では、なんの知識もないまま背表紙に書かれた本のタイトルだけを頼りに、本を買ったこともあった。サンテグジュペリ「夜間飛行」とか、ヘミングウェイの「日はまた昇る」とかがそうだった。中学生の担任の先生が「老人と海」を授業で説明してくれて、早速その本を買って、一気に読んでものすごく心がざわざわした。中学生ぐらいのときに本を読んで心がざわざわすると言うのは、世界に向けての視野が一段ぐぐぐっと開かされたということぐらいの大きなインパクトがあったってことだろう。シャーロックホームズシリーズを読んで夜にトイレに行くのが怖くなった、そのホームズシリーズも鈴木書店で買ったのだと思う。むかしの家は廊下は暗くて、その先にあるトイレはもっと暗くて怖い場所だったのです。推理小説を読んでいる夜に、部屋と(トイレに続く)廊下を仕切る障子を閉めたとたんに違う領域に入ったような緊張感だった。
 ホームズの「踊る人形の秘密」を読んで自分たちだけの字を作ろうと友達と考えたり、名探偵カッレ君のシリーズを読んで探偵団みたいなものを作ろうと友達を誘ったりしていたのは、10才くらいのときだったのだろうか?
 相変わらず読みかけの本がたくさん溜まっているが、昨年のうちに全部読み終えた本は以下の通りです。いつも携帯のメモ機能に読み終わると書いておくのだが、携帯を買い替えると(そのデータにそれほどの重要性を感じてないせいか)結局見られなくなるので、今回は下に転記しておきます。再読した本も何冊もある。よくベスト10とかベスト3とかを選ぶ・・・なんてことをするけれど、そういうのはころころ変わるし、その本を読んだときの自分のコンディションや知識や、そういうたくさんのことが左右するからベストなんとかとは言わないが、いま読んだ本のタイトルを見回して、面白かったなあという本を挙げてみると(って結局ベストを選んでいるだけか?)
・みんなの旅行
・ねたあとに
・マジック・フォー・ビギナーズ
・岸辺の旅
みな話の詳細はもうよく覚えてないのだが、その本を読んでいる最中に一つの「色」というか「雰囲気」というか、まあよくある言い方をすると「作品世界」ってことなのかな、そういうことに包まれたってことが、それも抽象的なそういう空気に漂わされたということだと思う。
 読み終わった瞬間や読んでいる最中にぐいぐいと物語に引き込まれるエンタテイメントではなくて、今もそういう風に「漂わされた」ことを覚えているという観点です。とくにマジック・フォー・ビギナーズのコンビニの話。

読了2012
1月
しあわせのパン/三島有紀子
流れ星が消えないうちに/橋本紡
戸村飯店青春100連発/瀬尾まい子
完全なる首長竜の日/乾緑郎
森崎書店の日々/八木沢里志
傍聞き/長岡弘樹
みんなの旅行/天野作市

2月
We Love ジジイ/桂望美
魚神/千早茜
キネマの神様/原田マハ
気高き昼寝/天野作市
ねたあとに/長嶋有
写真と生活/小林紀晴

3月
Boys surface円城塔
それでも3月は、くる/アンソロジー
作家の放課後/アンソロジー
ある一日/いしいしんじ
赤の他人は瓜二つ/磯崎憲一郎
小さいおうち/中島京子
愛しの座敷わらし/荻原浩

4月
ビッグ・サーの南軍将軍/ブローティガン
密林の語り部/バルガスリョサ
ポケットの中のレワニワ/伊井直行

5月
四とそれ以上の国/いしいしんじ
田中一光自伝われらデザインの時代/田中一光
逆さまゲーム/タブッキ
丘/ジオノ
たのしい写真/ホンマタカシ
福袋/角田光代

6月
マジックフォービギナーズ/ケリーリンク
好物漫遊記/種村季弘
ビブリア古書堂の事件手帖3/三上延

7月
小川洋子の偏愛短編箱
釣(百年文庫)
風の歌を聴け村上春樹
1973年のピンボール村上春樹
松林図屏風/萩こうすけ

8月
夏が僕を抱く/豊島ミホ
古道具ニコニコ堂です/長嶋康郎
岸辺の旅/湯本香樹実
物語「京都学派」/竹田篤司
ニセ札使いの手記/武田泰淳
元気でいてよ、R2D2。/北村薫

9月
宇宙エンジン/中島京子
魔法使いクラブ/青山七恵
神去なあなあ日常三浦しをん
海炭市叙景佐藤泰志
伏 贋作里実八犬伝桜庭一樹

10月
四十日と四十夜のメルヘン/青木淳悟
海辺のカフカ村上春樹
ふがいない僕は空を見た窪美澄
まほろ駅前番外地/三浦しをん

11月
オリーヴ・キタリッジの生活/エリザベス・ストラウト
燃焼のための習作/堀江敏幸
鹿男あをによし万城目学
ロンバルディア遠景/諏訪哲史

12月
小説、世界が奏でる音楽/保坂和志
マノンの肉体/辻原登
小説・秒速5センチメートル新海誠
吉祥寺の朝比奈くん/永田永一

みんなの旅行 (講談社文庫)

みんなの旅行 (講談社文庫)

ねたあとに (朝日文庫)

ねたあとに (朝日文庫)

マジック・フォー・ビギナーズ (ハヤカワepi文庫)

マジック・フォー・ビギナーズ (ハヤカワepi文庫)

岸辺の旅 (文春文庫)

岸辺の旅 (文春文庫)