本屋でふと手にしたジャズ批評7月号は「日本映画とジャズ」の特集号で、その中身の多くは安田南と沖山秀子のことに割かれている。私は、学生だった70年代に、片岡義男と安田南のラジオ番組「気まぐれ飛行船」を毎週聞いていたし、サニーや赤とんぼ〜フライミートゥーザムーンが入っている海の写真がジャケットのLPも持っていた。だけどライブを聞いたことはなかった。それが残念。
五年か六年くらい前に、安田南っていまも歌っているのかな?と思い、調べようとしたが、検索エンジンで「安田南」と入力しても、最近の様子は全く不明で、何の情報も得ることができなかった。忽然と消えてしまったようだった。
ジャズ批評には安田南が「亡くなった」ということが誰かのインタビューにだけさらりと書かれていた。えっ!・・・びっくりした。そして五年か六年前にはほとんど情報がなかったものだったが、いま検索をすると、安田南について長い文章をブログに書いている方も何人かいらっしゃって、それらを読む限りにおいては癌で2009年に亡くなったということらしかった。ヘビースモーカーで、姉御肌で、ときにすさまじい啖呵を切った、とかいうエピソードがあるようだが「気まぐれ飛行船」の片岡さんと南の会話は、常に落ち着いていて、気取らずに、優しげで、ときにはたどたどしくて、やわらかだった。私はその回を聞いた覚えはないのだが、愛猫が亡くなったあとの放送で、安田南がさめざめと泣き続けて、ただ泣いているその時間が放送されたということがあったらしい。
私は1976年の6月に放送された「安田南特集」の回の「気まぐれ飛行船」だけ、エアチェックしたカセットテープを持っている。そのテープをCDにして、さらにiPODにも入れている。安田南が亡くなってから四年が経って、はじめてそのことを知って、それをきっかけに移動中の新幹線の中で、久しぶりに聞いてみた。番組の中ほどで片岡が南にハガキに書かれたリスナーからの質問として、音楽はよく聴くのか?という質問をする。南は、むかし高校生のころに学校をさぼってジャズ喫茶に入り浸っていたころにはよく聴いていたけれど、いまはもう「この番組」とライブハウスの休憩時間にかかるレコードくらいしか聞いてない。と答えるのだが、そのあとに急に思い出した風に、弟がステレオを買ってくれたのだがそのステレオを設置して、では聞いてみようと思ったときにアームから針が外れてしまった。新しい針を買えばよいのだろうが、いろいろと種類があるみたいで細かいことを聞かれると恥ずかしいから買いに行けないままになっている。そのステレオ装置はラジオも聞けるからラジオ専用になっている、なんていう話をするのだった。
ここにこう書いても面白くもなんともないですね。このエピソードを話しているときの安田南の話ぶりというか声というか、それがなんというかラジオの時代ってこうだった、あの時代のDJはみんなこんな風にただたどしくとつとつと話していた、と思い出させてくれて、なんだか微笑ましかったりするのだ。どなたかのブログの安田南の記事の呼応して、コメント欄に当時の同志社大学での安田南+山本剛トリオのライブのことを書いている方がいて、すごい歌手だったことがあらためてわかる。そうそう、私のエアチェックした上記の「気まぐれ飛行船」でも安田南は、歌うことは気持ちがいい、と言っている。
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眠れ悪い子たち。
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合掌
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- アーティスト: 安田南ウィズ山本剛トリオ,安田南,山本剛,岡田勉,小原哲次郎
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
- 発売日: 2009/06/24
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