名古屋経由京都


 茅ヶ崎駅6:16発静岡行で西へ。静岡、浜松、豊橋で乗り換えて昼前に名古屋で途中下車。改札を出た中央通路から地下に降りた「味小路」みたいなところで味噌カツ定食。コインロッカーに荷物を入れてから、カメラをぶら下げて地下鉄東山線東山公園へ。駅近くのリトルプレスの本やZINEあるいは古書も扱っているON READING。ゆっくりと、ほとんどの自費出版の写真集を手にしてめくってみる。一冊購入する。Goodbye,Blue Monday/Yutaka Kobayashiという写真集。本当は不明瞭かもしれない安心の中でぬくぬくと過ぎていく冬を目の前にした乾いたような季節が写っていた。

 多くの冊子をめくっていると、私も参加している写真冊子ニセアカシアを作る際にも、力の抜き方をうまく現したい、などと思うが、それは迎合であってそんなこと気にしてはいけないようにも感じたり。

 目の前の東山公園へ立ち寄る。猛暑。アフリカサイは水をシャワーのように流すホースの下にずーっと立っている。バクは室内に座り込んで、猛暑の外を眺めている。コビトカバはおおむね水の中にもぐっている。テナガザル舎の室内にはエサがばらまかれているがサルは外に出ていた。それが、上の、写真、です。
 本山シマウマ書房は定休日なのか開いていなかった。
 名古屋駅に戻り、大垣と米原で乗り換えて京都に20時前に到着。20:30エレファント・ファクトリー・コーヒーに少し道に迷いながら行ってみるが、定休日。
 21:30出町柳のジャズ喫茶ラッシュライフ。まだ夕食を食べていないので、何か食べるものができるかを聞いてみたら、カレーならできるとのことで、カレーとコーヒー。アカペラによるコーラスの歌が流れたあと、一人先にいたおばちゃんのお客さんが「あー気持ちよかった」と感想を述べてから、桃をひとつマスターにプレゼントして帰る。
 しばらく客は私だけになり、一日営業しているあいだに何枚くらいのLPが回るのですか?とか、何千枚(か、何万枚?)かあるすべてのLPが順繰りに回るようにしているのですか、それともまったく回らないLPもあるのですか?どうやって回すLPを選んでいるのですか?みたいなことを矢継ぎ早に聞いてしまう。野暮ですねえ、私も。
 マスターは短く答えて、あとはコーヒーを作るのに集中するのだった。その短い答えに、私の心は少し柔らかくなった。
 そのうち常連のお客さんがやってきて
「今日は暑いねえ、でもなんだかいつもの夏と違うような、気持ちの悪い暑さだなあ」
みたいなことをつぶやく。夜にそういうつぶやきを聞いていると、ちょっとせっぱつまったような脅迫されているような気分が生じる。でもそれが一方的に悪い気分ではないのだった。旅先のアクシデントが最初から持つセンチメントが漂うような気分なのだった。ビリー・ストレイホーンのピースフル・サイドというLPが回る。旅先のジャズ喫茶で偶然出会う音楽は、その偶然が故にすごく良く聞こえてしまうのだった。いつものことです。

 この旅行には、ヘミングウェイ短編集「われらの時代/男だけの世界」を持ってきた。本日130ページ読み進む。情景が浮かぶように、ななめ読みしないように、読み進む。
 この短編集は、十年以上も前に古本屋で買ってあったまま読んでいなかった。昨晩、旅行に持っていく本を選んでいて、ふと気まぐれに選び出したものだ。

われらの時代・男だけの世界: ヘミングウェイ全短編 (新潮文庫)

われらの時代・男だけの世界: ヘミングウェイ全短編 (新潮文庫)