東京湾


 飛行機の中で離着陸中には全ての電子機器の電源はOFFにしなければならない。厳しいチェックがある訳ではないので、切り忘れもあるに違いないし、そんなの関係ないと勝手に無視する輩もいるだろうけれど、それでも電波の授受は百分の一か二百分の一になるだろう。もしも全員が決まりを無視すると、本当になにか、計器が狂って、飛行に支障があるのかな。そのあたりは一般人が常識としては知らないが、当然、ちゃんと全ての電子機器、スマホデジタルカメラiPhoneの電源は切る。時計はどうなのか?ボタン電池で動くクオーツ式の当たり前の時計から、定期的にどこかから信号を受け取って自分の時刻を修正している物まで、ほとんど全部が電子機器ではないのか。すると他にも万歩計とか、ペースメーカーとか、色々と浮かんでくる。
飛行機が羽田空港から離陸すると眼下には東京湾を航行する船が、航跡を引き摺って進むのが見える。これから、出掛けると言うちょっと高揚した思いと合致して、その光景を眺めるのも好きな時間だ。何しろ露出計の電池さえ入れてない完全な機械式マニュアルカメラであるから、そんなときにもこうして写真を撮ることが出来るわけだ。しかし、それでも、勘違いから電子機器を使っていると疑われると厄介なので一枚しか撮らなかった。
機内誌をめくると、本やCDや小物を「旅先」で、読むとか聴くとか使うとか、あるいは「旅先」で出会った思い出を交えて紹介されているページがある。最近読んだ機内誌で紹介されていたCDは世界各地で集めた音をコラージュしたというものだった。三十年くらいまえには、たとえば波の音のCDとか、鳥の声のCDとか、そういうのが今よりはちょっとだけだろうけど認知されていたような気がするな。
 音楽でも現場の音が入っているということであればライブアルバムであって、たとえば「ワルツ・フォー・デビィ」はライブハウスの騒音が聞こえる。
 長谷川きよしの「遠く離れたおまえに」はヨーロッパのいろいろな場所、夜の波止場とか、山羊の列が通る路上とか、古城とか、だっただろうか、そういう場所で録音されている。こういうことって純粋な音楽鑑賞からしてどういう位置づけなのか、音楽論的な考察も世の中にはあるのだろうがまるで読んだことがなくって、私はどちらのアルバムも大好きだ。ついでに言えば山下洋輔トリオの「モントルー・アフター・グロウ」のアルバムは本当に針がすり減るくらい何度も聴いた。

遠く離れたおまえに

遠く離れたおまえに

モントルー・アフター・グロウ

モントルー・アフター・グロウ