車窓からの流し撮り


 走っている電車の中から風景を撮るときに、遠方に狙っている(ぶらしたくない)被写体があるときには、ただ窓辺にカメラを置いて、カメラ自身の影や車内灯が写りこまないようにレンズを出来るだけ窓に密着させて、それでもってシャッターを押せばいいのですが、遠方でないところを写し止めたいときには、LCDファインダーをじっとみて、カメラの中央に捉えた被写体が中央に保持され続けるようにカメラを横方向に動かす(正確には回転させる)という、こっちが動いている状態の「流し撮り」をすることになります。上の写真のように、シャッター速度がそれなりに長いときには、奥行き方向でぶれない被写体距離は極めて限定されていて、よく見ると運転席のドアだけがちゃんと止まっていて、トラックの上がった荷台は少しぼけてしまっています。要するに所望の被写体をちゃんと止まって写すのは結構難しいのです。しかもさらにシャッター速度が長いと、距離方向だけでなく同じ距離にあっても横方向にもぶれる(見ている角度が異なるため)のです。これはこれで、上手く決まれば、中央一点に止まった被写体があって、そこを中心に楕円形を描くように被写体がぶれるからそれはそれで面白いものです。

 日が暮れて暗くなったので写真を撮るのをやめて、iPODを聞きました。iPODに入っていてもずっと聞いていなかった山下洋輔トリオを聞いてみました。ドシャメシャバシャバシャと。フリーでも洋輔トリオにはわかりやすいエンターテイメント性みたいなサービス精神みたいなのが豊富にある。

 若いころによく聞いていたバンスリカーナという曲はそのテーマのメロディを口ずさむことが出来るが、キアズマという曲はあまり聞いていなかったので、この年になってそのテーマを何度聞いても覚えきれない。音楽というのは現在の一瞬ではイントロ当てクイズみたいなもので音楽として成り立ってなくて、ほんのちょっと前とは言え、過去になったところからの音符の連続の今に至る記憶がメロディとして認識されている。こういう音楽を聴くための記憶力も当然若いときの方がすぐれているだろうから、音楽というものの鑑賞は、そういう点からはかれば若い方が向いているのかもしれないな。

下の二枚はその他の車窓写真です。