海街Diary


 弾丸海外出張から帰国すると、やはりほっとする。今回は出張先のロンドンで、パリで起きたテロ事件をTVニュースで知った。英語の字幕と英語の解説は半分か、それ以下しか理解できず心許無い。心細さを誘われる。実際にはロンドンからの帰国にテロ事件の影響は皆無だったが、帰国をすると、何度も海外出張に行っていても、いつでもほっとするものだ。ロンドンの土曜にはずっと冷たい雨が降っていた。
 海外でも国内でも、羽田に戻ったときには京急リムジンで藤沢まで乗るのが好きだ。電車を乗り継いで帰るよりも運賃は高いし時間もかかるが、それでもリムジンバスの進行方向を向いた左側の席に座り、ぼんやりと外を眺める時間を過ごしたくてバスを選ぶ。
 今日のように暮れ時に、鶴見つばさ橋や横浜ベイブリッジから、湾に停泊している船と淡いピンク色の混じった空が作る風景を見ると、帰国の安心もあってか優しい気持ちになる。

 飛行機の中で是枝監督の映画「海街Diary」を鑑賞する。
http://umimachi.gaga.ne.jp/
 鎌倉が舞台の映画で、ロケ地のほとんどがどこだか判る。それもまた面白い。
 是枝作品にしては、実際には起きるだろうのっぴきならないようなところ、もっとあるはずのどろどろとした人間模様のようなところ、そう言う場面を具体的に描くことをあえて意識的に外して、ほのめかしていく。ほのめかされた物語を忘れずに、それを層にして見失わずに見切れるかどうかを試されているような映画。小さな哀しみが集まっているのに、総じるとそれが暖かさに変わる。不思議な作り・・・いや、そういうのが暮らしと言うことなのかな。直面しているときには一つ一つがのっぴきならなくても、過ぎてしまったのっぴきならなかったことが集まると、それが懐かしさや暖かさに変容する。