鉄塔を辿る

 昨日、栃木県宇都宮市に出張し、帰路は宇都宮発熱海行の普通電車に2時間50分揺られてきた。グリーン車二階の進行方向に向かって左側の窓から車窓に飛び去って行く風景を写真に撮っていたが、そのうち暗くなり、同時になんだか眠くなったので、撮るのをやめた。やめる直前に撮っていたのがこういう鉄塔の写真だった。カメラは1インチのCMOSセンサーのコンパクトデジタルカメラで、実は目で見ても、これほどはっきりと鉄塔やその手前の森は見えないのだ。鉄塔があることはかろうじて判るものの・・・。そこで実際の景色ではなく、カメラの背面液晶を睨みながら、写真を撮った。それが、この、写真です。ありふれたコンパクトデジカメですら人の目より暗視性能が優れている・・・いつのまにかカメラは、暗視スコープの性能を知らず知らずにまとっているということか。

 鉄塔はずっと続いているから、それを辿るとどこかに行けるんじゃないか?線路や道路は列車や車という具体的移動手段が直結しているから、そう思うことは簡単だけれど、鉄塔を走っているのは電線と電気であり、移動手段ではない。けれども電線は空を背景にずっと続いているのが目に見えるから、辿りたくなるかもしれない。鉄塔武蔵野線という小説とそれを原作にした映画があった。空を背景に空中を易々と伸びていく電線とそれをつなぐ鉄塔。地上で辿るのは困難だ。それが余計に物語を生むだろう。

 旅に出る理由のひとつに「鉄塔をたどりたい」というのがあってもいい。

 くるりの「ハイウェイ(2003)」という歌、映画「ジョゼと虎と魚たち」の主題歌だったその曲の冒頭に『僕が旅に出る理由』が歌われる。この曲はその歌詞の最後には「僕には旅に出る理由なんて何ひとつない」となっていくのだけど、そこはさておき、冒頭で出てくる理由は

・ここじゃどうも息もつまりそう

・今宵の月が僕を誘う

・車の免許とってもいいかなと思う

と歌われる。ここの歌詞はもしかすると最後に「理由なんてない」というために、あえて世の中一般的なありふれた理由を持ってきたのかな?でも免許とるということと旅に出るはどういう関連なのか?合宿免許のこと・・・?

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