ブックカバーになった軍隊の写真

 ここ数日のあいだに使っている海で撮った写真は5/21に友人と葉山に遊びに行ったときに撮ったものだが、この日の昼に、友人と合流する前に逗子駅から少し歩いたところにある古書店Tで鈴木三重吉の「桑の実」という岩波文庫から出ている小説を買った。本のカバーに書かれた解説に「ことさらに劇的な展開があるわけではない」と書いてあるのに惹かれたのだ。その本を店内の奥にある会計に差し出して250円を払うと、カバーを付けますか?と聞かれたので、古書店のカバーがどんなものかと思って頼んだら、古書を仕入れたときなどに出てくる古い新聞やもう売れない本を使って、カバーにしているのだという。すなわち一品物のカバーだった。そして鈴木三重吉の文庫に巻いてくれたのは、昭和37年に発刊された、昭和一桁から戦時中に静岡連隊(軍隊)を柳田芙美緒(ふみお)というカメラマンが撮りためた写真集の、その発刊の頃の記事だった。新聞紙ではないので、当時あったのかどうかわからないが例えば朝日グラフのような大判の雑誌のページのように思える。行進している軍隊を手前にいる大勢の静岡市民が見送っている場面と、裏にはたぶん戦争で亡くなった兵隊の遺骨の入った箱を持った少年が斜め後ろから写されていた。

 ところで、上の写真のように、葉山の海にはよくこういう外国の方が一人で休日をすごしているのを見かける。バスのなかでも英語の本を読んでいる若い外国の男がいて、同じ神奈川県立近代美術館に近いバス停で降りた。日曜日に葉山に、あるいは茅ケ崎や鎌倉にやって来る彼らは、神奈川県や東京にある米軍の基地に勤務をしている方たちなのだろうか?そういう方もいるだろうし、もちろん、そういう方ばかりでもないだろう。

 40年ほど前にオートバイに乗って伊豆にツーリングに行った帰り、大磯の金目川河口に当時はあった駐車スペースに停めて、当時もいまと同様にちょっと海を眺めていたら、大きなハーレーが単独でやって来て、降り立ったアメリカの若い男とカタコトで話した。彼は横田基地に勤務しているが、もうすぐ別の国に異動になるらしく、おまえこのバイクを買わないか?と言った。日本には二輪免許に排気量別の制限があるから私のライセンスだとその大型バイクには乗れないんだよ、という意味のことを必死こいて伝えた。別れる時に、ちょっとイーグルスの曲名を思い出して「take it easy」と言ってみたが、恥ずかしくて小さな声だったから聞こえなかったようで、すぐにバリバリと大きな音で走って行ってしまった。

 若者が戦場に駆り出されないことを祈りたい。