今週のこと


 22日のこと。平塚駅周辺をぶらぶらしつつ、そのまま実家まで歩く。母の顔を見て、近況を聞き、お茶を飲み、帰る。途中古書店にて畑山博の短編集と吉行淳之介のエッセイを買う。私が大学一年のときに、いつの間にか文化祭実行委員になっていて、とある先輩に指示されて、畑山さんに学校に来てもらい講演をしてもらったことがあった。大学前のバス停で待ち合わせ、学食にお連れして定食を食べ、講演のあとに文学部の先輩一人と畑山さんと私の三人で飲みに行った。私は畑山さんに講演を頼んでいながら畑山さんが芥川賞作家とも知らずにいた。学生になってひとり暮らしをはじめ、居酒屋でビールを飲むのはそのときが初めてだった。その店の店主は学生運動のときに検挙された方だとかで、畑山さんと先輩はなにやら学生運動のことなどを語り合っていたが私にはちんぷんかんぷんだった。学生になって初めて少し世界が広がったような夜だった。

 23日のこと。夜、相変わらず、古いフイルムからスキャナーで画像の取り込み作業をする。スキャナーがウィーンと動いているあいだに京都の某さんに長い手書きの手紙を書く。書いているうちに、村上春樹の短篇「カンガルー通信」を書いている苦情受付係になったような気分になっていく。この手紙を受け取った某さんは気味悪いのではないか?

 24日のこと。夕方、社食で中華丼を食べる。「ごはん少な目」と指定しているが、中華丼の具に関しては少なくしないで欲しい。いや被害妄想か・・・。昨年、若くして事故死した画家難波田史男の若いころの日記などを収録した「終着駅は宇宙ステーション」という分厚い本を買った。1/3ほど読んだところで何ヶ月も読み進めていなかったその本を久々にめくり少し読み進む。この本にはほんの5〜6枚だが写真が収録されていて、その写真が、すごーく懐かしくてたまらなくいい。私が産まれた昭和30年代の写真。時を経た写真の放つ魅力は本当に不思議だ。

終着駅は宇宙ステーション

終着駅は宇宙ステーション


 25日のこと。朝、駅前駐輪場の三ヶ月定期の更新をするが、釣りを間違って渡される。そのときに気付かずにあとになって釣りが千円不足していたことに気付く。で、電話をしたら駐輪場事務室の人も気付いていて夕方に受け取りに行けばよいこととなった。夕方行ってみたら、外に出ていた係りの人は「そんなはなし聞いていない」と言う。仕方なく「事務室の中にいる人に聞いてくれ」とお願いしたら、やっと聞いてくれて、そうしたら中にいる人は今朝間違えたご本人ですぐに千円が戻ってきた。ところがそうしてやっと損を取り戻しただけなのに、なんだか得した気になってしまった。妙なもので。
 帰宅後、1993年だかに名古屋に行ったときの写真をスキャナーで取り込む。象の写真がある。朝早くに東山動物公園に行き、まだ外に出ていない象を室内見学通路から見たのだが、ほかに見物人は誰もおらず、少し恐怖を感じたのだった。あいだに象が渡れない溝があったのだろうが、思いのほか象との距離が近く、しかもあいだに柵がなかったのだ。そういうことを思い出した。一昨年名古屋に行ったときにも動物園に行ったが、いまの象舎は当時とは違っていて通路と象のあいだにふとい柵があった。象のことは覚えていたが、なんでこの年に名古屋に寄ったのか覚えていない。出張のついでだったのかなあ。学生時代、名古屋には叔母さん一家が住んでいて、その家では、夜になると東山公園から動物の声が聞こえてくることがあった。その叔母さんの家にはラジオが組み込まれた大きなステレオ装置があり、FM愛知からイーグルスの初来日コンサートの宣伝が流れていた。そのときに使われていた曲は「ジェームズ・ディーン」のイントロだった。その宣伝を繰り返し聞いているうちに行ってみようという気になり、チケットを買った。それが、それ以降、イーグルスにはまっていくきっかけだった。

 26日のこと。会社の定期健康診断。歯医者は流石に最近歯石除去をしたばかりなので問題なし。身長は相変わらず161cmと低い。もう伸びないのか・・・って当たり前だ。寧ろ縮んでなくてよかった。香川照之の出ているテレビCMのように腹囲を計る。CMのように腹をへこませてはいないと思うが、でもなんとなく少し引っ込めている感じもするなあ。だって昨年より4cmも減っているが、ありえないもん。それから出張に出る。吉野家で牛丼並みを頼み、ふと顔を上げたら、そこに営業のS氏がいた。お互いぺこりと会釈する。

 写真は1994年ころ、渋谷の駐車場にて。