桜と月


 茅ヶ崎のとある場所に丸い塚があってそこをぐるりと取り囲んで桜が植えてある場所がある。丸い塚は円墳とかなのかな、でも、上って降りる、頂上を突っ切る細い道があるからそういう神聖な場所ではないのかもしれないし。上るといっても高さは、どうだろう、2mか3mかそれくらいのものだろうか。すぐ東側が黒猫ヤマトの大きな集配所で、南は駐車場、北と西は住宅。そんな風に囲まれているけど塚だけは一面草がはえて、桜の根っこがところどころ出っ張っている細い土の道がひょろひょろと一本通っていて、たぶんずっと以前から変わらないのだろう。
 会社帰りの道を歩いていて、ああそうだあそこの桜を見ていこう、と思い出し、少し引き返して立ち寄る。三脚などないからビジネスバッグを地面に置いて、その上にデジカメを置き、長時間露光で写真を撮る。そんなに強い風ではなかったが、写真の中では枝が揺れて花がぶれている。今日は満月なのかな、丸い月が出ていた。