春の夕暮れ

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 晴れた木曜日。夕方予定されていた会議が中止となり、定時まで仕事をしたのち、近所の散歩に出る。こういうのも、毎日のように歩いていた頃があるかと思えば、今日のようにひとつきかもっと経ってから久しぶりに歩くこともある。家の前の路地を少し入った場所に大きな紫木蓮の木があるのだが、もう花は終わってしまっていた。ソメイヨシノはだいぶ散ったが、それでも一本一本のばらつきの中では、陽があまり当たらない場所にあるのだろうか、ちょうど今が満開に思える木もあった。あるいはソメイヨシノではない桜には、この下の写真は枝垂れた桜だったが、いまがまさに満開に思えた。そしてたくさんの花が咲いている。ホトケノザカラスノエンドウ、ツクシ、ハコベ。園芸種もあちこちに。チューリップ、日本水仙、ラッパ水仙、ガーベラ、スズラン。畑は更地になっているところも多い。これから何かを植えるのだろう。ビニールハウスは大抵トマトのようだ。細い路のT字路のところに道祖神が置かれてた。何度か通った路だけど立ち止まってじっくり見たのははじめて。よく見るとすり減った道祖神は、見ざる言わざる聞かざるのようだった。結局のところ私たちの多くは「見て、聞いて、でもなにも言わない」あるいは「見て、聞いて、言うけど・・・言っただけで行動はしない」だろうか。冬のあいだは西の方にくっきり富士山が見えるのだが、春の夕暮れどきに富士山はなにも見えなかった。小学生たちが遊びから帰るべく自転車に乗っている。何人かはフードのあるトレーナーで、何人かはTシャツ一枚だった。おい、ぼうや、寒くないのかい?と心のなかで呟くが、言わない。知らないおじさんは子供に話しかけたらいけない、というか、なにかトラブルになりそうで警戒してしまう。トマトのビニールハウスの隣に200円を入れるとドアがあくロッカー形式のトマトの自動販売機がある。その前も何回も通ったことがあるが、私はトマトを買ったことはないし、誰かが買っているところに出会ったこともなかったのだが、今日はどこかの自転車でやってきたおばさんが(いや、お姉さんかな・・・)トマトをちょうど買っていた。それでしばらくその様子を見ていたら、睨まれました。しばらく歩いていると、トマトを買ったお姉さん(おばさんかな・・・)が猛スピードで私を抜いて行った。シジュウカラがツーピーと鳴いている。電線に止まって、ずいぶん小さな身体で、そのくせ大きくよく響く声で鳴いている。すると、数十メートル向こうの方から、同じくツーピーと鳴く声が聞こえてきた。なんの相談をしているのか。シジュウカラの声はとてもよく通る。先日、ドトールでピラミッドケーキいちごなるものを食べたこと、不意に思い出したりする。混線したラジオみたいに、不意に思い出すことがある。

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