強風の日


 横浜高島町の映画館まで「鴨川ホルモー」を見に行く。
 一昨年、小説を読んだときは楽しめた。ここまでエンターテイメントに徹していると爽快だった。普段は鹿爪らしいことを言っている(書いている)私だが、エンターテイメントを排除しているわけではないんですよ。楠木ふみ役が栗山千明だと聞いたときには、そりゃあミスキャストだろ!と思っていたが、映画を見たら適役だった。つい先日、林林さんと行った京都の銀月アパートメントが頻繁に登場していて、そんなことも見る方にしてみれば嬉しい。映画の出来も、やっぱりエンターテイメントに徹していて、映画館でも笑いが絶えず、小説同様爽快だった。

 映画が終わって外に出ると、風はますます強くなっている。風にあおられた木々の葉が、葉の裏を見せていて、枝がしなっているような光景を動きとして見るのが好きだ。そして、そういう光景を見ると写真に撮るのだが、いざ写真になると、その強風がなかなか写らない。強風がそよ風のように見えてしまうのだ。
 強風が写っている写真と言えば、須田一政の「人間の記憶」だったかに収録されている強風にあおられる柳の木の写真や、楢橋朝子の「フニクリフニクラ」に収録されている髪の長い女性のその髪が、強風で真横に流れている写真を思い出してしまう。そういう強風を強風のままに写しこんだ写真が撮りたいのだが、難しいものだ。
 映画館を出てから、気紛れに歩く。戸部町から伊勢町というところを通り、野毛山に出て動物園に寄り、日の出町の駅まで坂を降りてから野毛の街を歩く。野毛は大道芸の日で路地に一杯、見物客があふれている。そこから伊勢佐木町をかすめて関内の駅に出た。そのあいだ何枚も何枚も風にあおられる街路樹やらを撮ったのだが、帰宅してチェックすると満足な駒が見つからないのだ。上の写真は、もっと木の根元まで写っていて欲しいなどと、帰宅してから思うのだが、根本の方にはフェンスとかがあってそれを避けたのだ。しかし、フェンスもあってそれで光景なのだから変な作図をしなければ良かったのに、と思うのだ。

 茅ヶ崎に戻ってから、海の方に十分ほど歩いたCafeODARAに初めて行ってみる。珈琲を飲みながら、読みかけの川上弘美を読み進む。珈琲、最初はちょっとなじめない感じだったが、カップに半分くらいのところでその味にどんどんなじんで行き、最後には美味しいと思った。


爬虫類館がいいね


こんな風に川を眺めているおっさんがいるところが横浜っぽい


茅ヶ崎に戻ったころには陽はずいぶん傾いている