御苑にて


 私も、三脚こそ使ってないけれど、こんな風にカメラのファインダー越しに紅葉の枝葉を見上げているわけで、だから誰かの写真の中にこんな風に写っているのに違いない。「頑張れカメラマン」というか「それゆけカメラマン」というか「愛すべきカメラマン」というか、うん、正解は「愛すべきカメラマン」でしょうか。まあ、横柄にならないようにしましょう。

 高島屋タイムズスクエアで弁当を買って、新宿御苑の芝生にシートを広げて、弁当をもそもそと食べてから、しばらく読書をする。持ってきたのは安岡章太郎のエッセイ集で、作家は本の中で心筋梗塞と胆管結石を患っている。もしかしたら誰でもが近しい誰かに懸念が発生していて、それだから本に書かれていることは他人事ではない気がする。が、今日もまた穏やかな日で、周りの家族連れはみな楽しそうに幼子を中心にして日曜日のあるべき時間を過ごしていて平穏で平和で幸せに思える。「とりあえず」という単語は逃げているというか後回しにしているというか、そういうことかもしれないけど、「とりあえず」今のこの東京の新宿御苑の人々は、とても素敵に思えるのだった。



 画面の中のどこに幹もしくは枝を配置するかを気にします。