春の日曜日


 1980年ころ、会社の近くに桜がたくさん咲く公園があったから、会社の「仲間」というより「課」もしくは「部」で夜桜の花見に行ったことがあった。要するにほとんどが先輩の中に私がほぼ新人として混じっていたわけです。同期のK村くんもいたけれど。そのとき、K先輩が、残業なんかするもんじゃない、人生の時間には限りがあるのに会社に時間をささげてどうする、定時になったらさっさと帰るべし、と、酔っ払って説教(なのか?)を仕掛けてきた。冬に戻ったような寒い夜だった。その日、ぐてんぐてんに酔っ払ったK先輩をご自宅まで送って、そのまま泊まらせてもらったのではなかったか。そのK先輩の訃報が、あの花見から三十数年を経て、先月、聞こえてきた。K先輩はおかしな人で、会社でカブトムシの幼虫を育てていて、机の下に置かれた水槽(の中の堆肥に幼虫を飼っている)に、毎夕、口に含んだ水を霧状に吹いたりしていた。でも水分の与えすぎで幼虫は死んでしまった。癌検査の薦めを無視していて手遅れになってしまったらしい。それもまたらしいのだった。
 それぞれの人にそれぞれのコトがあって、そういうそれぞれの人がたくさん集まってワイワイ騒いでいて、なかには人生の時間をどうすごすべきかを論じている人もいるかもしれない。うたかたのそれぞれのコトが愛しいということか・・・傍観者に成り下がったカメラマンは思ったりするのです。
 カメラ趣味者各位。今日においては、一人で写真なんか撮ってないで誰かとワイワイした方がいいと思いました。