奈良と京都


 金曜から日曜にかけて奈良と京都に行ってきた。正倉院展でカラフルな宝物をたくさん見てきた。色鮮やかな靴下や、楽器奏者の正装や、すごろくのガラス玉やら。あるいはきれいな明るい緑色の定規。

 土曜。京都の白川疎水沿いの築百年ってことまでは行かないのかな?Gアパートメントというレトロなアパートがあり、そこの一室を工房として最近借りた「どってことない」友人Nさんに建物内を案内してもらった。しかも夜に。こういう場所は福岡のhiro23さんが明るい昼間に撮ると、素敵な写真を撮りそうだ。廊下を暗室電球(?)の赤い光が照らしている片隅などは近づくのが怖い。古いタイヤがもうパンクして潰れている緑の自転車が立てかけてある。そのハンドルの大きな曲線が美しい。二階に続く階段の踏み板と、その一段上の踏板をつなぐ縦の板は穴が開いていて、大きな人や急いでいる人がいると踏み抜きそうだ。
 ところでこの上の写真の注意書きはいつからあるのだろうか?むかし、このアパートは大学生ばかりが住んでいたらしいから、学生さんたちに対する注意書きだということは文面からも納得できる。しかし「蓄音器」とは・・・
 夕方より一層静かに、のあとに(勉強時間)と書かれているのが消されているのが面白い。今度は昼間に案内してもらおう。

 金曜。奈良では歩きすぎて、今日時点でまだ、左足の太ももの裏の筋肉に鈍痛があるし、左足の甲も痛い。興福寺唐招提寺平城京跡、などを回ったあとに、比較的すいている時間だと事前に調べておいた午後の遅い時間に正倉院展に行ったから、要するに歩きすぎです。

 土曜。京都の市役所の北にあるHiFiCafeで、本日の珈琲とピザトーストを頼んだ。頼んだあとで、ピザトーストよりシナモン蜂蜜トーストの方が良かったのではないか?という後悔があった。これは私のふんぎりの悪さを表す悪癖です。よく家族に怒られます。ところが、店のマスターが注文を間違えたらしく結果としてシナモン蜂蜜トーストが出てきた。以心伝心?美味しかった。

 日曜。五条高瀬川下るあたりにある五条会館、旧五条歌舞練習場というところでアラーキーが24×20の大型ポラロイドで撮った写真展を開催中だと、奈良のとあるギャラリーに置いてあったちらしで知ったので、雨の中行ってみた。高瀬川両側の建物をずっとチェックしながら歩いたが会場が見つからず七条通りまで行ってしまった。それで帰りは鴨川と高瀬川のあいだの路地をくねくねと歩き回った。このあたりはほんの数年前まで特飲街の名残の店があったそうです。そういう建物だったと思われるタイル張りの外装がところどころに見つかる。でも、会場は見つからずまた五条通まで戻った。もう雨水を吸い込んだ靴から靴下に水が浸みてきた。ここまで探し回って見つからないので、やっとスマホで検索する気になった。そうしたらすぐに地図が出てきて、なんだそっちだったのね、という方向の道沿いだった。もう歩き疲れていて息も上がっていて、ゆっくりと写真を見るところまで心が落ち着かないうちに、もう帰らなければいけない時間になってしまった。写真と会場はすごく合っていたと思う。

 金曜。奈良では「工場跡」というカフェに寄って珈琲を飲んだ。昭和50年代まで営業していた乳酸菌飲料フトルミンの工場だった建物を再生したとのことで、工場は大正時代の建物とのこと。店内写真撮影禁止だったので、当然写真が一枚もないが、当時の製品の壜やポスターやらも残っていて、味わい深かった。

 日曜、一乗寺のカワタレでは、トーストと一緒に、バターとラムレーズン入りバターと林檎ジャムとピーナッツバターとチョコの壜がトレーに載って出てくる。ちぎったトーストに好きなのを塗って食べる。いつも、京都出身のくるりが歌う「魔法のじゅうたん」の歌詞を尊重して(?)ピーナッツバターを多用してしまうのだが、11月の雨の遅い朝食のときには、なぜだか林檎ジャムが美味しかった。

 土曜夜、オリーブのピクルスや温野菜サラダや、マグロ頬肉のカルパッチョやエビフライを食べた。店を出たら寒かった。持ってきた真っ赤なセーターを着てくればよかったがTの部屋に置いてきてしまったのだった。Nさんがおすすめの映画を教えなさい、と言うので、例えば「スモーク」なんてのが浮かんだので言ってみた。Tも何かを挙げていたな。

 土曜の午後遅くには、初めて会った方と話していた。旅の夜の寂しさの魅力みたいなことをかっこつけて話してしまった。恥ずかしい。

 日曜の午後、テレビでJ2湘南対町田の試合の最後の十分だけを見た。逆転2位で昇格決定、飛び上がって喜び、監督のインタビューでもらい泣きしそうになる。

 帰りの新幹線では諏訪哲史の小説を読んでいた。