祇王寺


 目の前に、不意に、思いもしなかった光景が広がると、息を飲んでしまう。ちょうど苔が美しい季節なんですね。

 京都グラフィーの各企画のうち、もうひとつ行ってみたかった高谷史郎@西行庵を見に行く。小さな庵の引き戸を開けて入場すると、二つの作品が展示されている。ともに写真を動画仕立てにしてプロジェクターを使って見せる作品で、そこに何を意味するのか赤い光によるデジタル数字が動いており、また赤い光、レーザーのような細く明るい光も使われている。特に中谷宇吉郎博士が撮影した人工雪の結晶の写真を短時間で画像を切り替えて次々と見せる作品は、その像が映る幾何学的でメタリックな装置の不思議さ、なにか時を越えたはるか先の時代に無人の(あるいは人類が滅亡してしまったあとの)静寂のなかで、それでもひたすら映像が流れ続けているような無限のような静寂を感じる。客が私一人で薄暗い庵の中に入れられ、ストンと引き戸を閉められたからかもしれない。
 近くの高台寺では細江英公氏の作品「鎌鼬」の展示が行われていたのだが、待ち合わせ時間があり断念した。

(備忘・行動メモ)T宅より徒歩で詩仙堂へ。新緑と鳥の声、目の前で椿の花がぽとりと落ちる。掛け軸の言葉の意味を漢字から類推すると、飽食や大酒を抑えて、色欲も禁じていれば、気血が良くなり寿を得る、というような意味のことが書かれている。⇒出町柳で鴨川デルタで遊ぶ人たちをスナップ⇒祇園四条駅から徒歩で西行庵へ⇒阪急の四条の駅から、桂乗り換えで嵐山へ。Mと合流⇒嵐山を散策。竹の小道はたくさんの人が歩いているが、それでもなおかつ見応えがある。この道を歩くのは二十数年振り。途中で湯豆腐定食を食べる。⇒祇王寺の苔の美しさに目を見張る⇒野村という螺鈿の店http://www.kyoto.zaq.ne.jp/sagaraden/などをのぞく⇒北野白梅町から市バスで高野⇒そば鶴で茄子田楽やざるそばなど。