自転車で海


25年くらい前に、とある写真の集まりに顔を出したら、誰かが尾瀬だかで撮ってきた風景写真を囲んで、数人の方がぼろくそに批判していたのでびっくりしたことがあった。その写真は昼間に撮られたものだったが、批判している人たちの主張は、風景写真とはもっと朝早くかもしくは暮れ時に撮られるべきであって、そうでないと劇的な美しい風景は現れないのである、というようなことだった。早起きをしない段階で写真趣味と自ら言う人として失格である。
 この写真は水平線が画面のど真ん中に横切っているし、真昼間だし、彼等の主張によれば、まったくもってなっていない風景写真ということになるのです。

 朝、8時前に自転車で海へ。茅ヶ崎の漁港あたりから海沿いのサイクリング道路を東へ。途中、月例湘南マラソンだかのゼッケンを付けたランナーが必死の形相で走ってくる。私の漕ぐ自転車とランナーは向かい風の関係になっているから、こっちは彼等とぶつからないように砂の溜まった、道の端っこをよけるように漕ぐのだが、砂にタイヤを取られて運転がままならない。
 ときどき自転車を降りて砂浜を見回し、何枚か写真を撮る。その結果が、この写真。

 途中から海沿いのサイクリング道路から外れ、辻堂駅方面へ。駅近くの喫茶店「はにぃびぃ」というところに入ってみる。平仮名の丸文字で、トールペイントで描かれたミツバチの絵の横に店名が書かれているボードが掛かっているような、昭和50年代あたりの雰囲気。モーニングにサンドイッチとコーヒー。こころなしか珈琲の味も、そのころのような酸味が感じられる。

 11時前に帰宅。そのあとはちょっとした家の用事で自家用車を運転して行ったり来たりする。今朝のサイクリングとも言えないような短時間に、半そでから出た腕が日に焼けたらしく、少しひりひりするのだった。