砂を被る猫


 暖かい早春の陽射しを吸収して、この海沿いのサイクリングロード脇の砂は暖かくなっているのだろう。白い猫がこちらを向いて、その砂の上に座っていた。カメラを向けて、そっと近づく。私は猫好きではない。ただ定番被写体なので、なんというか、どうせ何かに使うわけでもないが、一応はちょっと撮っておこうかな、程度の動機だ。そういう気持ちは猫にも伝わるだろうから、大抵の猫は私が近づくと警戒のために即時逃走するか、即時逃走可能姿勢をとりカメラを持ち上げたりするとやはり逃走する。この猫は逃走せずに、私が近づいたことが行動のきっかけなのか、それとも完全無視でマイペースの行動なのか、不意に砂の上に仰向けになり、背中を砂に擦るようにしている。砂でノミを除去しているのか、暖かい砂風呂に入っている感じなのか。
 数十秒のあいだ、その動作が続いてから、すくっと起き上がると、こうして道の向こうへ向かって歩いて行くのだった。