誤読


 家に帰って、食卓の上とか棚の上とか主に紙物が散らかっているなかに、家族がどこかでもらってきたかんぽ生命のメモ帖が置いてあって、表紙には女優さんの顔写真が印刷してあり、キャッチコピーとして「人生は、夢だらけ」と書いてある。それがちらりと目に入ったときに「人生は、裏だらけ」と誤読してしまって、げっ!なに?と思い、見直してしばらくしてやっと(というのは数秒してやっと)誤読に気付く。こういうのは、目が瞬時に字を見極める能力の低下、単純なセンサー単体の性能低下なのかな?それとも、分析読み取り回路のところでなにか妄想というか思い込みのようなことが働いて、ある程度必然的ななにかに導かれて、誤読の先の字として「裏」が選ばれたのか?
 それにしても「夢」に「だらけ」を付けて「夢だらけ」なんて言葉、あってもいいけど、なんだかあまりありえないような気もするな。夢ったって悪夢だってあるわけだし。夢だらけじゃあ妖怪の名前みたいなものでかえって危ない。妖怪「ゆめだらけ」っていそうじゃないか。
 誤読じゃなくて意味不明というのも怖いですね。この写真のような街角の白い壁なんかにときどきどこの字が判らない字で、英語でも日本語でもないような字で何かが書かれているのを見る。大抵はスプレーで書かれたようなもの。それを見ても、意味不明だからなんか「デザイン」的な「形状」の面白さとか、もしかしたら意味不明だからこそ起きる異国情緒というか異国情緒まがいなカッコよさを感じるのだろう、ふと写真を撮ったりもする。だけど、もしかしたらこんな落書きなんだから、相当汚らしい意味のことが書いてあるのかもしれない。その字を読める人が見るときと読めない人が見るときとで写真を見て感じることは全然違う。写真に字が写りこませるのは禁じ手というか、扱いが難しいことなのではないか。