記憶の先のサーフィン


この写真は6月8日にupしたのだが、文章を書く余裕も時間もないまま、いまは、一週間後の15日の日曜、夕方の7時(日が長いからまだまだ明るくて夜って感じはしない)で、移動中の東海道線の中でこの文章を書いている。
この前の月曜日には甲府出張があり、行きに八王子駅に早くに着いて、一時間ほどの余裕があったので、布屋パーラーという表通りに面してパン屋、横のドアを入って店の奥と言うのか裏と言うのか、そこは喫茶店になっている店に行ってみた。ホットドッグのモーニングセットを食べた。
ここのところ、喫茶店、それも多くは昭和の風情の残るような店でモーニングを食べるのがマイブームになっている。今週は金曜日に、大田区蒲田からちょいと歩いたところに、いつぞやに散歩と言うか町歩きスナップ撮影をしたときに発見した豆福珈琲という店も行ったな。厚切りのトーストが美味しかった。かなりお歳を召されたマスターは、私以外には常連客らしきおじさんかカウンターに一人で据わってスポーツ新聞を読んでいるだけという空いた状況であったが、蝶ネクタイをキリリと締めて、てきぱきとしていた。
水曜は北関東某市で、大先輩の、定年延長雇用もいよいよ終わったご苦労様会に出席。
木曜は荏原町駅近くの和食の店で、これも仕事がらみの食事会。私と同じくらいの五十台のおじさんたちが五人くらい含まれる総勢七人の出席者。うち一人が、大学時代に自動車ラリーの部活をやっていて、手回しのタイガー計算機を使っていたという話をはじめた。ラリーというのは速ければ速い方がよいものだと思っていたが、スタートからゴールまでを指定された時間通りに走る競技だそう。そんなこと知らなかったから驚いた。それで、運転手に、いま出すべき速度を計算して伝えるために計算係が同乗しては手回しの計算機で常に算出をしていたと聞かされた。
それで思い出したのだが、私が小学生の頃に、住んでいた神奈川県平塚市には、三つ四つ映画館があったが、そのうち東宝の劇場だったと思う、若大将シリーズ(加山雄三と星由里子(字、違うか?)と、対抗役の田中邦衛が出てくる映画)と、私のお目当てはそっちではなく怪獣映画なのだが、目当ての怪獣映画とその若大将映画が二本立てで組まれていた。その頃に見た若大将映画の中に大学の自動車部に若大将が所属しているという設定の映画があった。よく覚えているのは、映画と映画の間の時間に買って食べたバニラアイスが大変に美味しかったことと、その映画のラリー場面で、地図読み係が配られたコース地図に書かれた「小さな橋を渡ったら右折」の「ちいさなはし」を「こさなばし」と読み、名前が「こさなばし」という橋を探し続けて時間を無駄にするという場面にとてもハラハラドキドキしたことだ。覚えてはいないが、あの映画では、タイガー計算機係が同乗していたのかもなぁ。なんて話をしたら盛り上がったが、その先に最近の若い子供はもう自動車を欲しがらないし興味もない奴が多い、という話になっていく。その辺りがいかにものおっさんたちの定番会話で、しゃあないもんだ。私が「最近の若いもん」だったときには、何を言われていたのかな?でもだからダメだなんて誰も言っていなくて、不思議な顔をしながら、じゃあ今の若い人たちにとって、車じゃないなら何が車にとって変わったのだろうか?と腕を組んで考える始末。人それぞれで多岐に亘っているというのなら悪くないか。
この荏原町での食事会のときも、それまでに一時間ほどの時間をつぶす必要が生じたので、荏原町から近い旗の台の駅前にある喫茶店カフェリアとか言う名前だったかしら、ふるいビルの二階にある広々とした店で珈琲を飲んでいた。こういう昭和レトロ(何て言う名前も嫌いなのに便利だから使っている)な店の店主は60代半ば辺りの学生運動か盛んだった頃に学生時代を過ごした、活動には後ろ向きでノンポリとか言われつつも、文学や音楽に思想的に波及してくる変化には敏感だったりしていたような人が多い気がするな。これも最近だが、蒲田の喫茶店グッデイで、60年代70年代とおぼしきクロスオーバーの走りのような電気jazzが流れていたときに、音楽選択から推定される人物像をこんな風に勝手に妄想した次第。旗の台の駅前の二階の喫茶は窓側席から改札口が見下ろせる。夕方で、近くの昭和大学の学生が大勢行き来する。ここは今が70年代なら、ガロの歌う学生街の喫茶店に相当していたのかも。その頃に昭和大学があったのかは知らないけれど。しかし、これだけ華やかに学生が通るのに店にはあまり客がいない。車に興味のない彼らはどこで集まってぐだぐだするのか?もしかしてネット上の仮想空間?
金曜日、帰りに満員の東海道線に乗るために、ドアから溢れんばかりの人がいてもめけずに、おしりの方からぐぐっと押し込むようにして乗り込む。35年もサラリーマンをしているので、あたりまえの行為である。ところが、金曜日はこのぐぐっと乗るときに左足が変な風に捻られてしまった。茅ヶ崎駅に着いて、足を引きずるように歩く。家に着いて、ものすごく疲れている。夕食の前に甲府で買ってきた信玄餅を妻と分けあって食べる。糖分が入ると少し元気が取り戻せるような気がする。
そんなこんなの日々であります。