アレキサンダー・グロンスキー展


 先日のこと。東雲駅近くにある元は港湾地区の倉庫だったのだろう大きな建物のなかに、ほかのいくつかのギャラリーとともにあるYUKA TSURUNOで、アレキサンダー・グロンスキーというエストニアの写真家の写真展を見た。1980年生まれの方なので34歳か。若い方ですね。
 私が行った時間にはほかに客はなく、ふと仕事の手を休めたかったのだろうか、一人ギャラリーの受付というか窓口に座ってパソコン作業をしていた、スタッフの艶やかな黒い髪の目のかわいい女性が、会場まで出てきてくれて少し説明してくださった。ぱっと見ると美しい広大な風景のように見えるがよく見るといろいろなことが秘められていてそれは単純に美しいというだけではないこと。「たとえば」と彼女は一枚の写真の前に行き、そこに写っているものに見える不気味さを指摘したり、別の写真の前では氷のなかに作られたプールの宗教的な意味を解説してくださった。
 プレスリリースにも使われている一面の雪景色の平原のなかに三々五々散らばって遊んでいる人々の写真は、雪という白い背景のなかにカラフルな服装や持ち物の色を浮き立たせていて、とても美しい。
 大きなカラープリントで写真を見せて、しかも解像度もすぐれているから、目の前までプリントに接近してもそこに写ったものがなにだかがちゃんと見て取れる。そういう写真の見方が当たり前になることで、写真家の作品は、もしかしたらだけれど、鑑賞者になにを見るかをゆだねる度量みたいなことが増えたのかもしれない。感覚的にふと感じたことだけど。

 でもって上に載せた写真は、その写真展とはまったく関係のない写真でした。