11月の砂浜 ヨコトリ


 三連休が始まる前、三連休の天気予報はずっと雨や曇りで、その通りに昨日はときおり雨が降る寒い日だったのだが、今日の日曜日、起きてブラインドの隙間から外を見ると晴れている。おやおや晴れているではないか!と嬉しくなり、7時過ぎのバスで茅ヶ崎駅へ出て、電車を乗り継いで鎌倉へ。鎌倉駅江ノ電ホームにくっつくようにして昔からあるカフェ・ロンディーノでチキントーストを食べて珈琲を飲む。珈琲を飲み終えてすぐに店を出る。また雲が空を覆ってしまうのではないかという懸念があり、昨日のブログにはどんな天気でもそれを愛でることが重要だと岡潔が書いていたことを書いたりしたのに、今日も好天のうちに写真を撮りたいと気持ちがあせったりしている。それでも砂浜まで行く前に鎌倉農協に寄り、まだ朝が早いこともあり台の上に山のように盛られたたくさんの緑の野菜を眺める。買って帰るわけにも行かないが(このあと横浜に回ることもあり)、知らない名前の葉物野菜や根菜が並んでいると美しい。ここで(野菜を買うことは滅多にないので怒られないようにひっそりと)写真を撮っても、目の前にあるこの野菜の美しさを写真に残せることがほとんどないのだ。
 由比ヶ浜にあったラ・ジュルネで長いこと、さらにジュルネ閉店後は小町通りの裏にあった(いまの店になる前の)ヴァカンスに移ったA子さんの作る料理にふんだんに使われていた生野菜を思い出す。年に一度か二度か、いやもう少し、それでもせいぜい三度か四度しか行かなかったけれど、一昨年かそのまえの年かの夏にA子さんがいなくなって、もうあの料理が食べられなくなったと判ったときはがっかりした。どこへ消えたのでしょう?海外放浪かな?
 砂浜までずっと八幡宮から真っ直ぐに続く道を歩いて由比ヶ浜に出る。11月の海は、今日は特に暖かいせいもあるのか、ぼんやりと気持ちが良いような時間につつまれている。ぽかんとあっけらかんとしている。もうあんまり人がいない。機関車トーマスのリュックをしょったおじさんが、連れのおばさんの写真を撮っている。おじさんは機関車トーマスが大好きなのだろうか?
 ぽかんとあっけらかんとしているわりには、なにかが変化していくことが悲しいような気持ちが、というよりそう感じさせる何かが覆っている気もする。スクーターでやってきたおじさんはスクーターにまたがったままに、海を見たり、次にはバックミラーに映った自分の髪型をチェックしたり、そしてまた海を見て、それからまたバックミラーを見て、を繰り返している。太ったサーファーが海から上がってくる。最近太ったアスリート(?)をよく見る気がするなあ。先週は、箱根の山道を自転車(マウンテンバイク)で漕ぎ、登っている、太った人も見た。いやなに、たまたま二人そういう人を見ただけで、最近そうなのか?などと思うのは短絡に極まりないってことか。

 横浜に移動して、明日までが会期の横浜トリエンナーレの9月にすでに鑑賞した横浜美術館ではなくもう一つの新港ピア会場に行く。通し券なので9月に買った券を大事に取っておいたのでそれで入場できるのだった。
 エジプトで写真館を経営している老カメラマンのインタビューを収めた、動画作品が判りやすくて面白い。大竹伸朗の「記憶濾過小屋」には惹かれてしまう。この作品は私と同年代の男性を吸引する力が強いのではないか?見ているとおじさんたちはみんなカメラを取り出してこの展示を撮っている。私も撮ったけれどまだフイルムを撮り終えてないので今日のブログには紹介できない。