晩夏の風


 台風が通り過ぎたあとにはまた猛暑が戻って来ると、誰かが言っていたようだが、もうあの八月上旬のような猛暑は戻らないだろうし、今日だって涼しいままだった。風がやや強い。ユリやプラタナスの街路樹に風が吹くと、葉は真夏ほどはもうどっしりと重くなくなっいるのか、はらはらと葉裏を見せている。すると葉裏の輝きは、簡単に言うと「乾いていて」(みずみずしくなく、若々しくなく)、色あせてきている感じに見える。いや、こんなのも気のせいなのかもしれない。見ている私に「夏が終わる」という惜しむ気持ちがあって、それで街路樹の葉にさえ何かを見ようとしている、それだけのことなのかもしれない。ただのセンチメンタルな気分なのかもしれない。
 先日、断捨離気分で大整理して売ることにした百冊を優に超える本を、再度本当に売ってしまってよいかを最終チェックして十冊ほどだけ救い出して、あとは紙袋五個に詰めて、夜になってからブックオフに持ち込んだ。このブックオフ茅ヶ崎大曲店って言うのかな駐車場が完備している方で昨夕にヴェンダースの写真集を見つけた方ではないです。永井龍男井伏鱒二久保田万太郎安岡章太郎のケースのある単行本も、これらだけはブックオフより古書店に売った方が引き取り価格が高いだろうと思っていて、Yさんにどこに売るのが良いか相談したりもしていたのだが、面倒になって一緒に持って行ってしまった。ゼロ円ではなかったがこの手の箱に入った本は一冊5円だった。
 結局全部で1900円になった。1900円にしかならなかったと書くべきか。一箱古本市にでもマメに出しながらお客さんと会話しつつ徐々に売る、というか「買ってもらっていく」ことが出来れば楽しいのかもしれないが、やはり面倒臭くてそんなことも出来ないな。。。
 以前ネットの書き込みだけを頼りに試聴もせずに買ったゲーリー・ピーコックとビル・フリーゼルのデュオアルバムを久しぶりに掛けてみたが、買った時と同様に思いのほか実験的で聴きずらく戸惑ってしまう。それでも「レッド・リバー・ヴァレイ」のベースソロのところなんかは安心して聴ける。
 本を売って少し部屋が広くなって、そういうときだからかこんな滅多に聴かないCDを掛けてみたりする。部屋が広くなって嬉しい気分もゼロではないが、なにか取り返しのつかない失敗をした気分もゼロではない。