大徳寺高桐院


木曜日の夜、翌日の金曜に休暇を取って、仕事が終わってから京都へ。何か主たる目的があるわけでもないのに。妄想しているのは相変わらす、どこかで良い読書をする時間を過ごしているところなのだ。本も面白い、その場の居心地もいい。もし何かを食べたり飲んだりしているのなら、それの美味しさなのかささやかさなのか、それもいい。とかなんとかの妄想。てっぺんにあるのは読書の満足感で、居心地も、食べたり飲んだりするものもそのための脇役なんだろう。いや、読書の満足感すら、脇役で、結局はちょっとリラックスしたいのだ。その成功する確率が京都へ行けば高い、そんな気がする。と言うことなのだろう。

ふた月くらい前、太田和彦著「ひとり飲む、京都」と言う文庫本を読んだ。十年かもっと前、同僚のS君から吉田類ではなく太田和彦の「にっぽん居酒屋紀行」DVDを借りて一気に見たことがあった。もしかしたらそれぞれの番組のタイトルは微妙に違っていて、吉田類のは居酒屋紀行ではなくて居酒屋放浪記だったかもしれないな。私は飲めないくせにこう言う飲み歩きに憧れる。飲める人が羨ましい。
四月に京都国際写真祭に行ったのに合わせて、京都在住のO夫妻やニセアカシアのHさんと神馬と言う居酒屋に行った。このブログにも写真を載せた。昨年も京都国際写真祭に行って同じメンバーで飲んだのだが、そのときOさんがこの神馬と言う居酒屋の評判を聞き付けて予約の電話をしたがすでに満席だった。そこで昨年は、三条大橋近く、先斗町に入っていく辺りの、五六八と言う、店名を染めた白い、もしくは生なりの暖簾を出している居酒屋に行ったのだった。飲めないから一人で居酒屋に行くのは難しい。資格がない感じがして入れない。だけど、居酒屋に行ってあれこれ食べるのは大好きだから頼みは友人知人である。去年の五六八も楽しかったし美味しかった。去年は予約が一杯で行けず、今年はOさんが早々に予約をしておいてくれたので行くことが出来た神馬も素晴らしい。
太田和彦の前述の本にはその神馬のことも書いてある。四月に神馬に行く前にこの本を買ったのか、あとに買ったのか、どっちだったかはわからないが、神馬が載っていたことが本を買うのを後押しした。
太田和彦が京都に一週間滞在して食べ歩いた記録の本である。著者も朝から晩まで飲み歩いているわけではない。朝や昼には喫茶店うどん屋にも足を運ぶ。本に出てきた喫茶店はだいたい全部、行ったことがあった。行ったことがあるから、正しく覚えている訳もないが、知った風に思い浮かべることが出来てしまう。すると、そこに載っていないほかの喫茶店のことや、そこからはじまってその辺りの街のことやらも浮かんでくる。こんなことも京都に行きたくなる理由なのだ。
週に少なくとも二回くらいは通勤や買い物の途中で新刊本の書店に立ち寄る。太田和彦の本を買ったのと同じ頃に本屋で立ち読みした何かの雑誌に、京都×タマゴサンドイッチの特集記事が載っていた。タマゴサンドイッチなんてどこでもある。玉子焼きが分厚くて、シンプルにそれだけが挟まれているタマゴサンドイッチを出す店だって京都に限らないんだろう。ただそう言う店の、人口密度なのような数値、分厚い玉子焼きを挟んだシンプルなタマゴサンドイッチ密度、がちょっとだけ他より高いとすればそこに目をつければ特集記事が書けるってことか。関サバと言われる捕獲領域のすぐ隣の海で泳いでいるサバだってきっと同じように美味しいが特集されない。
そしてそう言う記事を読むと、毎年五回六回と京都に行き、趣味が京都に行くことのようになっている私は、なるほどねその手があったか!などと思ってしまうのだった。じゃぁ、誰かに「また、京都ですか?」と聞かれたら「今回はタマゴサンドなんだよ」って答えよう。こんな不必要なことまで答えを準備している。誰もそんなこと聞かないのに。
そんな訳で京都に来ました。写真は苔の緑が美しい大徳寺の高桐院にて。
ほかに

大徳寺 聚光院
創建450年記念特別公開
公開中 ~2017年3月26日
千利休菩提寺にして、日本画の最高峰・狩野永徳の障壁画を有する大徳寺聚光院。2016年に創建450年を迎えるこの聚光院が3月から1年間、特別公開をいたします。』

なんて案内も見付けて金曜の9時の回に行ってきた(平日だったおかげか、事前予約せずとも空きがあった)