夜になっていく時刻


 数か月前から予定のない時間にふと思い出しては、2010年以降2017年までに撮った大量の写真を「月単位」を区切りで見直しては、今の目で埋もれていた写真をピックアップしていた。最初は季節に限らず適当にある年月を選んでいたが、そのうちに、五月と六月を選ぶようになっていた。ひと月のあいだに撮った写真の中から選ぶのは少ない月で十数枚で多い月で六十枚くらいだったろうか。そんなことをしていて、それを実施した月が16になっていた。2010年以前にもたくさんの写真を撮って、それが全部HDD二台以上に残してあるが、2010年以降に区切っても、この2017年7月までに90以上の月数が過ぎているから16と言うのは二割にも満たないわけだが、選んだ写真がひと月平均で四十枚だったとすると、そうして選んだ写真が40×16=640枚くらいになっていたわけだ。とここまで書いて、そのフォルダーをプロパティで分析したらファイル数が846と出てきたから、もっと多かったです。
 夏休みでもあるし、ここはひとつ、さらにその846枚をベースに写真集を一冊自作してみようと思い立ち、月曜火曜くらいでさらに選抜して、水曜の夜には選んだたぶん250枚くらいを普通紙A4一枚に四枚でプリントして、カッターで四分割してA6相当にした。それを木曜と金曜にDVDレンタルで借りた映画を観ている隙間の時間(トイレのために一時停止したときのついでなど)とか、読書のあいまの時間などに、仮に選んで並びを作ってまた崩して、そんなことをしていて、一応木曜の夜に概ね40枚で並びを決めたので写真用紙でA5サイズにプリントをした。土曜の午前にタイトルを、中身はストリートスナップ的なのに、まったくなんの脈略もないままにふと浮かんだだけで「green sleeves」と決めて、表紙にその字を入れたりしたものを追加でプリントした。それで全部ページをそろえてから、土曜の昼頃に横浜駅西口のキンコーズへ持っていき、製本作業を数百円でしてもらう。表紙と裏に透明アクリルを入れる。そうするといままでこうして何冊か自作の一冊だけの写真集を作って来たがなんとなく「様になる」のである。
 出来上がった写真集をバッグに入れて、すぐ近くのDORAGONなんとかっていう大衆中華の店で回鍋肉定食を食べた。奥の席にサラリーマンや若者男性ばかりのなか、ひとり細面の清楚な若い女性が座って食べている。きれいな光景だった(が、写真に撮るわけにもいかないですね)。
 帰宅してから、家族は用事があり不在とのことで、月曜にTSUTAYAで借りた五本のDVDの中から「Life goes on 彼女たちの選択」という映画を観た。日本では劇場公開は至らず、DVDのみ発売(およびレンタル)という映画で、アメリカのモンタナ州のリビングストンという町やそこから車で四時間離れた牧場などを舞台に四人の女性のそれぞれの日常の「目下の課題」のもとでの心の揺らぎや希望につながるふとした思いが描かれる。四人の女性はほとんど交わらない。一つ目のエピソードの主人公が最後のエピソードのなかのとある会話の場面で後ろを通り過ぎていくとか、ほかにも気づいた範囲ではせいぜいもう一つかな、その場所の同じ季節(冬に向かう季節)を覆う概ね曇天の、気が滅入るような季節ということが通奏低音のような役割をしている。音楽はほとんど使われない。いや、使われているが、滅多やたら雰囲気を作りこむべく流れ続けるような過度な演出には回っていない。普段、大したストーリーのない何も起きない映画が好きだ、などと人に表明しているが、大したことのないかどうかはさておけばストーリーがあるからよりどころにしているわけで、この映画の「淡々さ」には驚いた。それで、それゆえに女優陣の演じる力やカメラワークや背景に秘められた隠し味が気になって、まさに尾を引く映画なのだった。たぶんこの映画を観た人の平均的感想は「つまらない」方に傾くのだろうけれど、私はすっかり驚かされて試された感じもして、これはきっともういちどじっくりと見るだろう。
 夕方になり、ずっと雨ばかりだったのに今日は晴れているから、これを逃したらもったいないと思い、久々に自転車をマンションの自転車置き場の一番奥から引っ張り出してきて、蜘蛛の巣を払い、フレームやサドルを乾いた布でささっとふき取り、チェーングリスはまだ十分にあるから良しとして漕ぎだしたのが午後5時半。適当に思いつくまま路地を曲がって。相模川を渡り、平塚の駅のあたりから線路を南に越えて、最近はダイエットのため(?)朝はバナナ一本を基本としているので行かなくなったものの、半年前にはよく土日の朝にモーニングを食べに行っていた(そのまえに湘南平に風景写真を撮りに行っていた)平塚市千石海岸のデニーズの方向へ進んでいたら新しい蕎麦屋があった。ノンアルビールでいたわさを食べて、夏季限定の「パクチー蕎麦」を食べてみる。これはざる蕎麦の刻みのりをパクチーにして、その量をだいぶ増やしてあるもので、漬け汁にはさいた茹で鳥が入っていた。パクチーの香りが強くて蕎麦の味がわからないまま食べ進む。どうせならこういう変化球メニューではなくてもり蕎麦にすれば良かったか。昨年の秋にオープンした店だという。日本酒メニューやあてとなる料理もそろっているようだった。
 蕎麦屋のおばちゃんがもうすぐ雨が来るよと教えてくれたけれど、遠くの空がときどき遠雷で光るものの、それは随分と北東方向遠くに思えるから、そんな天気警告も忘れてまたぞろゆるりとペダルを漕いでいく。相模川の一番海より、国道134号の橋を渡って、渡りながら河口の突堤で釣りをしている人を写真に撮ったりしていく。
 橋を渡り国道を逸れて、最近順番に新し建物に変わっている浜見平団地を抜けて東海道線をくぐり、自宅まで自転車でもう十分以内というところまで来たら、ある時刻を堺にして大粒のばらばらと降りかかる雨。
 あわてて首から下げていたカメラをバッグに入れて帰ったが、シャワーを浴びたように髪から雨水がしたたった。

砂州でルアー釣りをしている人だろうか?増水の危険がありますね。

この雲を見て、もうじき雨がやってくると思いながらもいざ降らなければ意外と安心してしまっている。