くぼみのような

f:id:misaki-taku:20200822212149j:plain

もう二十年くらい前になるのだろうか?もっとかもしれない、雑誌「東京人」に「くぼみ町」特集と言う号があった。たぶん、そのときにすでに古本屋で買ったのではなかったか。その本で「くぼみ町」とはどういう町のことかと言うことも説明してあったのだろうけれど、その号だけに作られた造語だったのかしら。覚えているのは、何人かの写真家がその雑誌が「くぼみ町」とした町を撮った写真が載っていたのではなかったか、そのなかに武田花が撮った大森の写真があった・・・と思う。その写真がすごく良かった。「眠そうな町」の武田花の、あの日に照らされた真昼間の、なにも媚びてない使い古されたものたちが作る町が、図太い時間の蓄積が作る味わいを見せているところを掬い取っている、あの写真集のそのままの写真だったと思う。いまもあの頃の「くぼみ町」があの頃の「くぼみ町」らしい光景を残していることはないのだろうけれど、それでも今と言う時代のなかで、同じく「くぼみ町」なんだろう。

真冬だろうが真夏だろうが、くぼみ町には強い日が射しているのではないかな。その日が作る影や、そに吹く風を見たいのだろうな。

f:id:misaki-taku:20200822212220j:plain

 

眠そうな町―武田花写真集

眠そうな町―武田花写真集

  • メディア: 単行本