水彩画

f:id:misaki-taku:20210328115952j:plain

 土曜日。午前、予約していた病院に寄ったあとにそのままカメラを首からぶら下げて茅ケ崎の街を歩いていく。茅ケ崎市美術館では収蔵品展をやっていたから、その展覧会のポスターになっている三橋兄弟治の少女が三人芝生に寝転がったり思い思いの姿勢で遊んでいる水彩画の絵を見たいと思い寄ってみる。美術館の庭にある何本かの梅の木を見ると小さな梅の実がたくさん生っているのだった。所蔵品展では、その三橋兄弟治の水彩画が何点も飾られていた。静物(夜)という作品は、黒い花瓶と花、レモン、赤い蓋の黒っぽい液体が三分の一くらい入った瓶、白い陶器の水差し、などが窓辺の青っぽいグレーのテーブルに置かれ、その背景は木枠の窓になっている。窓の向こうは「夜」の闇のようだが、窓ガラスは室内の明かりを反射して少しグレーに描かれている。なんだか、最初はよくある静物画に見えたけれど見ているうちにざわざわしてくる。夜の不穏が怖い、というより、夜に一人でいるときについついいろいろなことをネガティブに考えてしまい、それらが漠然としたこの先への不安になっているような、そういう気持ちはだれもが経験したことがあるのだろう、そういうことが思い出させられるのだった。

そんな気持ちになったとはいえ、外に出てしまうと、初夏のような温かい春の日である。入館まえに撮った梅の実を、出た後にもまた見上げる。写真を撮っていると、背中側を通りすぎた初老の女性が「もう実っている」とつぶやいた。

鳥の声があちこちから聞こえる。シジュウカラ。もっと小さいちょっと尾がすっと長い小鳥が飛ぶのも見かけた。